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第一章
蚊の毒
レーヴィ=サルミネンはフィンランド出身である。それでタンザニアに来てまず困ったことはその暑さだった。
「話には聞いていたけれど」
「意外だったかな」
「予想以上だったね」
隣にいる自分と比べて三十センチは低い眼鏡のアジア系の男に対して応えた。それでその巨大な身体のあちこちをしきりにタオルで拭いている。
金色の髪と青い目をしており白い肌である。そして見事な顎鬚を生やしている。二メートルはあろうかというその身体はまさに巨人であった。
彼は学者である。生物学を専攻している。彼が今タンザニアにいるのはある謎の猫科の生き物に関するフィールドワークの為である。
「塚本、それでだけれど」
「うん」
その東洋人、日本の生物学者である塚本康はすぐに彼に応えてきた。二人共半袖で探検に出るそのままの格好で今その場にいるのだった。今二人は空港を降りて街の中にいる。
「水ライオンだけれど」
「サバンナにいるらしいね」
「そうだよね。しかし」
サルミネンはその水ライオンについてさらに話すのだった。
「不思議な生き物だよ、全く」
「確かにね。まず姿は」
塚本もまたその水ライオンの話をするのだった。何しろ彼等が今回このタンザニアに来た目的はその謎の生き物の調査の為だからである。
「サーベルタイガーだからね」
「今この時代にいるだけでも驚きなのに」
「それが主に水の中にいる」
塚本はこのことも言葉に出した。
「実に不思議だよね」
「全くだよ。猫科は虎とかが水浴びを好むけれど」
「水の中を活動の中心にしているのはね」
「ないからね」
それを考えての今の話だった。
「そんな猫科の生き物はね」
「しかもね」
さらに話す塚本だった。
「カバを追い回してそれでずたずたに切り裂いて殺す」
「特に食べることもなく」
「これも不思議なことだよ」
塚本はサルミネンに対して述べた。
「全く以ってね」
「そうだよね。それでだけれど」
「うん」
「アフリカには他にも奇妙なライオンがいるというし」
水ライオンだけではないのである。アフリカには他にもそうしたライオンの話があるのだ。この大陸はまだまだ多くの謎があるのである。
「高山地帯にいる」
「岩ライオンだね」
「あれもおかしな生き物だね」
サルミネンは汗を必死に拭きながら述べる。塚本も時々タオルを使っている。それだけこのタンザニアが暑いということである。
「どんなライオンなのか」
「さっぱりわからない」
「まあ僕達はその水ライオンを探しに行くわけだけれど」
「ガイドさんは?」
サルミネンが今度問うたのはこのことだった。
「ガイドさんはもう来てくれているのかな」
「ああ、もう
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