九十五 敵か味方か
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立ち去ったシカマルを眼の端に捉えつつ、キバが勝ち誇ったように笑う。
その笑みを苛立たしげに睨みつけていた多由也は、顔の裏で含み笑った。
(……やっぱ流石だな、ナルト…)
本人ではなく影分身だったものの、ナルトは消える寸前、多由也に耳打ちした。
それはシカマルをわざと見逃せ、との指示だった。
ナルトはナルの許へ向かうとすれば、シカマル自身だろうと踏んでいた。だからこそ、当惑する多由也に一言告げてから消えたのである。
敵を逃すなどあり得ないという彼女の性格及びキバの出現をも配慮した上で、シカマルではなく新たに現れたもう一人を相手するようにと助言を与えていたのだ。
この時点で既にシカマルの行動を見抜いていたナルトを内心賞賛しながら、多由也はキバをわざと苦々しげに睨んだ。
ナルトの宣言通りの展開。それを最初から知っていながらも、そんな事はおくびにも出さず、キバを真っ直ぐに見据える。
「死の旋律を奏でてやる」
そうして、己自身の目的を達成する為に多由也は笛を口許に添える。
決意を秘めた瞳の奥で、旋律を奏でられるのは自分か相手かを自問自答しながら。
轟々と二体の像の合間から飛び降りてゆく水。
勢いよく流れ落ちる瀑布は水煙を立て、その場にいる三人の姿を時折覆い隠していく。
『終末の谷』で再びあいまみえた三人――波風ナル・うちはサスケ、そしてアマル。彼らの表情は三者三様であった。
明らかに驚愕し声も出ないナルを見咎めて、サスケは傍らに佇む少女の顔色を窺う。
アマルと呼ばれた少女は努めて無表情に徹しているようだった。だが、その瞳の奥に微かに悲痛の色が垣間見え、面倒臭そうにサスケは顔を顰める。
(…ったく、次から次へと…)
そもそもサスケは火影たる綱手に里抜け理由を前以て伝えている。木ノ葉のスパイとして大蛇丸の懐にわざと飛び込む、いわゆる隠密活動を任務として許容された身だ。
もっとも火影である身、追っ手を差し向けざるを得ないとは事前に聞かされていた。だから多由也から木ノ葉の忍びが追い駆けて来ているという話を耳にしてもさほど驚きはしなかった。
同時に察する。スパイという特殊任務故に、おそらく自分は抜け忍として皆に知れ渡っているのだろう。つまり木ノ葉の裏切り者として認知された上での追っ手だ。
追い忍は通常ならば里から出す前に殺害する目的で派遣されるものだが、これからスパイとして音に潜入するサスケの目的を綱手が知っている今、それは無い。
以上から、現在サスケを追う追い忍は、火影の建前上として差し向けられた追っ手だという事になる。
(だからと言って、よりによってコイツ(ナル)かよ…っ)
己
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