第二十二話
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
勿論、この間に暴走体が大人しくしていたはずがない。何が起きたのかは全く理解出来ていなかったが、獲物が反逆したということだけは理解していた。
何故自分の触手が消滅したのかなど、所詮動物程度の知能しかない暴走体には考えられない。だが、恐怖は感じていた。得体の知れない恐怖を。
恐怖を感じると、生物の行動は大体2パターンに別れる。
恐怖を感じて、その敵から逃げるのか。それとも、恐怖を感じて、その敵を排除しようとするのか。
自分に戦う力があるものは、後者を選びやすい。根本的な問題の解決を図るのである。暴走体も、後者を選んだ。それが、運命を決定づけたのである。
数万本の細い触手を、一斉に叩きつける。今までのような手加減した攻撃ではない。正真正銘、全力の一撃だ。餌として確保するよりも、跡形もなく吹き飛ばすのを選んだのである。
・・・が、もはやその行動に何の意味もなかった。
バシュッ!
空気の抜けたような軽い音が響くと、触手の先端が消滅したのである。
『OOOOOOOOOOOOOOO!!!』
残った部分が地面を叩き破片を撒き散らすが、葵たちの場所までは届かない。暴走体は混乱し、力任せに残った触手を叩きつける。
―――が、
バシュ、バシュ
無意味だった。あれだけ猛威を振るった恐るべき攻撃が、全く届かない。暴走体も、そしてフェイト達全員は呆然としている。
冷静なのは一人だけである。
(・・・これで、もう魔法対策は完璧だな)
その葵は、凍えるような冷たい瞳で哀れな暴走体を見ている。フェイトたちに発散出来なかった怒りを全て含めて暴走体に叩きつけようとしているのだ。彼の心の中は、静かに・・・しかし、マグマのように煮えたぎっていた。
「どうなってるんだ・・・。」
ユーノの呟きは、全員の心の声だっただろう。先ほど死んだ人間が生き返ったこともそうだが、これだけ圧倒的な力を手に入れているのだ。
★★★
葵が進化して新たに手に入れた力。それに名前を付けるなら、【魔力完全掌握】だろうか。周囲の魔力を強制的に隷属させる異能である。彼の周囲では、いかなる魔法も彼の許可なしには存在出来ない。リンカーコアから供給される魔力すら、本人ではなく葵に支配されるのだ。【魔力完全掌握】は、まさに魔法に対する最終兵器とも呼べる能力であり、同時に、魔法以外には一切の効果を及ぼさない、魔法に対して特化しすぎた能力でもあった。
元々彼は、それが”エネルギー”であるならばどんなエネルギーでも操作可能な力を持っていた。電気、熱、運動エネルギー、そして魔力。種類を問わずありとあらゆるエネルギーを操作可能な能力が、”エネルギー操作”なのだ。
――
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ