黒に包まれ輝きは儚くとも確かに
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だろ?」
「ひっでぇな! あたいだって……そりゃアニキの使うあいつらには勝てないけど……」
「いつかは勝てよ? 期待してるぞ、九番隊長殿」
「むぅぅ……期待してるって言われて嬉しく思っちまう自分がなんか口惜しい……」
膨れる猪々子と苦笑する秋斗に着いて行けず。
一寸で切り替わった緩い空気は、先程の重苦しさの欠片も無い。
あの場がこうも簡単に崩れるのかと、桔梗はどっと溢れ出る安堵と共に釈然としない想いを胸に抱く。
別段、彼らは目の前に誰がいようと気にしない。徐晃隊の頃から、秋斗が作る空間は変わらない。
戦場であっても、死地の前であっても、絶望的な状況に落ちていても、彼が居る場所はいつでも曖昧に過ぎるのだ。
楽観的で感情表現豊かな猪々子の気質は、秋斗の遣り方に何処かぴったりと嵌るモノであったらしく、だからこそ、彼ら徐晃隊も受け入れが速かったのかもしれない。
――黒麒麟に兵士がついて来るのは、兵士達が黒麒麟を好いておるからか……ああ、なんとも……。
桔梗の心に浮かぶのは羨望。
敵だった相手ともこうして仲良くなり、しかもコロシアイをしたはずの兵士達と元敵将が信頼関係まで築いている。乱世で育まれた絆を見せつけられて、羨ましい……と子供のような感情が湧いてしまった。
そんな桔梗とは対照的に、やっと思考が追いついたのかハッとした焔耶は……彼が途中でした発言を思い出し……苦い表情で口を開いた。
「貴様……無駄に戦を振り撒いて、大徳とはよく言ったモノだな」
「……俺は黒だからな。劉備と一緒にすんなよ」
「人の血が流れることをお前はなんとも思わないのか」
「それが嫌だから乱世を終わらせる為に動いてる」
「意味が分からん。お前は乱世を広げるとさっき言ったじゃないかっ」
言葉には言葉で、即座に切り返す彼の言は焔耶を苛立ちに染めるモノばかり。
次第にヒートアップしていく焔耶。秋斗は淡々と答えを繋いで行った。
「人を傷つけることで作れるモノもある」
「傷つけなくていい方法を考えろ! 傷つけて得るモノなど……」
「誰も傷つかず、誰も失われない茶番な乱世なんてもんは有り得ない。失うモノがあるから人は大切なモノに気付ける。失うことが怖いから人は大切なモノを守ろうとする。ただそいつらはみんな何も無くしたくないから、誰かの大切を奪って喰らって幸せに手を伸ばすんだ」
この世界で見てきたこと、感じてきたこと、聞いて来たこと……全てから判断して言の葉を並べる秋斗は、無表情の奥で心の中に想いを仕舞い込む。
「決めつけるな! しかも桃香様がそういう奴等と同じだと言いたいのか! お前達が何もしなければもうこれ以上の争いは起こらないって桃香様も朱里も藍々も言ってるぞ!」
「見解の相違だな。俺達は
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