黒に包まれ輝きは儚くとも確かに
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にしなければ顔向け出来んわい」
個人的な感情が半分。やりきれなさが半分。桔梗の心情はそんな所。
確かに民の血を流すことは為政者の一人としては失格ではある。だが、劉璋という太守の忠臣としては、ぽっと湧いて出たような新参者に国を牛耳られる事に不満を持つのは当然と言えば当然であった。
ぎらりと輝く黄金の目に、焔耶は何も言い返せなかった。
「忠義……儂が示すのはそれよ。この中途半端な状況を打破できるのなら、やっと太守になれたクソ坊主が返り咲けるというのなら……」
ふい、と視線が秋斗に向いた。足を組んだ体勢のままそれを受ける彼は、少しも気圧されることなく緩く笑う。
「お前が考えている策か何かに、乗っかってやろうと思うてな」
ほう、と吐息が一つ彼の口から洩れる。
その隣、あんぐりと口を開けている猪々子は、敵である益州の将が言った言葉を頭に取り込めていない。
焔耶も同様に、桔梗が示した桃香との敵対示唆を受け入れることなど出来なかった。
そんな彼女達を気にすることなく、秋斗は桔梗に片目だけ細めてみせた。口元は、いつもの通りに引き裂いて。
「クク……バカかお前は」
「なんじゃと?」
返されたのは嘲笑。
忠義モノの心情吐露は、普通の人間ならば称賛してしかるべき。きっと華琳が此処に居れば桔梗が欲しいとでも言ったはず、春蘭が此処に居ればその心に敬意を表していたはず。
だが、目の前に居るのはこの大陸でも一番の異端者。褒めることも、同情することも、欲することも無い。心の機微に聡い彼は冷静に、冷徹に今の状況を見るしかしない。
思わず殺気だった桔梗も、そんな返しが来るとは思いもよらなかったらしい。
「そんなに戦争がしたいなら勝手にしてろよ。お前が自分で仲間を集めてやればいい。誰かの手を借りようなんて、甘ったれたこと言ってんじゃねぇや」
は……と呆れを零して彼は喉を鳴らした。
蔑みは他人に頼るその姿勢に対して。忠義を貶めるつもりは無く、忠義があるのなら自分で動けと発破を掛ける。
「それに、魏延がいる時点で劉備軍にお前の裏切り情報は抜ける。二重スパイの可能性も……あー、どういえばいいか分からないな……まあ、不振の芽を与えらえると思ってのことだろうけど、んなもん対価にすらなりゃしねぇ。一人で来てても同じこと、曹操軍以外の将と手を結ぶ気は無い。
だから俺の返す言葉はこれだけだ。“自分の好きにすればいい”……ってな」
突きつける予測は桔梗の逃げ道を封じる為に。
例えば、桔梗が内通者になったとしても、二重スパイとして動く可能性もある。
裏切りと見せかけて本当は黒麒麟の思惑を潰す為に来ていた……なんて事にはさせないと、秋斗は突き放すことでそれを封じたのだ。
敵でさえ
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