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乱世の確率事象改変
黒に包まれ輝きは儚くとも確かに
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しし、と歯を見せて笑った。

(友達大事にすんならあたいと一緒だっ♪ じゃあアニキはあたいとも同類ってことだなっ)
(いて……まあ、否定はしない。俺もバカだし)
(あ! 遠回しにバカにしてるだろ)
(さあ、なんのことやら。それよりあいつら、いつまで黙ってるつもりなんだ?)

 気楽にバシッと肩を叩いて、いつも通りのやり取りを一つで話は終わる。
 目の前の客二人を置いてけぼりにしていたと漸く気付いた二人が視線を向けてみると、神妙に瞼を閉じて悩む桔梗と、じっと耐えている焔耶の姿。
 幾分、やっと桔梗が目を開く。瞳にあったのは普段焔耶に向ける厳しさよりもさらに冷たい輝きであった。

「……言うておくが、儂は劉備軍を認めておらん」
「そ、そんな……何故ですっ」

 師からの答えは、桃香を絶対視している焔耶にとっては衝撃的に過ぎた。
 一寸呆気に取られて、その理由が知りたくて悲痛な声を上げた。

「主の影でこそこそと動く輩が気に喰わん。臭いモノに蓋をして終わらせようとする性根に嫌気がする。
 確かに白黒のけじめを付ける事案というのは国を治める上ではかなり少ない……が、儂ら年寄りには、やりきれん思いも少なからずある」
「しかし……もし、桃香様と劉璋が争えば多くの人々が血を流すことになります!」
「そうじゃな。血を流さないことこそが、国を治めるモノの使命であり、責務じゃ。国の治め方として、劉備軍の取る方策はこの上なく正しい」
「なら何故っ」

 行いの正しさを理解していながら認めない、分かっているのに同じ側に立たない。そんな桔梗を理解出来なくて、焔耶はまた問いかける。
 目を細め、大きなため息を吐いた桔梗は武器を優しく撫でやった。
 瞳に浮かぶのは……悲哀と後悔。ただ意思の輝きだけは、誰にも消せない程に強く。

「……クソ坊主が目を覚ませばきっと……と、そう願うのは悪いことかよ、焔耶」

 静かな言の葉であっても、否定を紡ぐことは許さない圧力が其処にはあった。
 悪政に堕落し、愉悦に溺れ、栄誉を甘受した辺境の龍を、彼女はまだ信じている。

――洟垂れのガキがいっちょまえに州牧になったというのに、儂ら臣下が見放して……どうする。

 悪い奴だと言われようと、ほんの小さな子供の頃から世話を焼いて来た主。いつかはこの男が龍になると信じて、桔梗は長い長い時を雌伏して過ごしてきた。
 やっと来た乱世、漸く手に入れた機会、空へ羽ばたき舞い上がる龍と共に戦えるかもと思った矢先……戦わないままで奪われる全て。

「儂のように考えておるモノは成都以外にも多いぞ。張任、冷苞、ケ賢などは徐庶と諸葛亮に何度諭されても聞く耳を以っておらんのは知っておろうに。
 老害と呼ばれようと、儂らは先代に恩がある。クソ坊主を一人前の龍
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