黒に包まれ輝きは儚くとも確かに
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々子に、彼も思っているままを伝えた。
猪々子だけでなく、雛里さえも知らない。今の彼でさえ知ることは無い。
黒麒麟が歪んでいたことは知っていても、どういった歪み方をしているか等、昔の秋斗でさえ気付いていなかったのだから。
自分の描く平穏のみを見据えていた黒麒麟は、初めから桃香の理想になど興味が無い事と同義で……そして絶望の淵、桃香が自身の描く世界を作れないと知り、自身が“劉備”を演じて未来を作り上げようと画策し始めた事は無関心の最終到達点。
桃香という人間ではなく、求めたのは“劉備”の名。世界を変える為に必要だからと、桃香という人間を上書きしようとしていたということ。
積み重なった歪みと大きな絶望の果てに黒麒麟は桃香から興味を無くした。
外れかけた心の鍵から溢れた黒麒麟の無関心が彼に影響を与えていることに、記憶の無い彼が気付くけるはずもない。
ただ、猪々子が嫌だと言ったことで自身の危うさを知ることが出来たのは、彼にとって幸運だった。
うるうると潤んだ瞳を向けられてふと気づく。
猪々子にこんな簡単に話せたのは、彼女が本心しか言わないと知っているからだと。
問いかけに対しての答えが、自分を留めてくれると分かっていたからだと。
(……詠や月のことも、バカ共のことも、曹操軍の皆のことも、あたいのことだって、いつか興味無くなっちまいそうだから怖い……そんなのやだよ)
寂しく哀しい感情を乗せて吐き出された言は、彼に真っ直ぐ突き刺さる。
(そういう奴は誰かと居ても一人ぼっちじゃんか。いつか大切なモノまで失くす。誰のこと言ってるかアニキなら分かるだろ?)
思い浮かぶのは狂い乱れた将。
たった一人にしか興味が無かった紅の将は、無関心の盲目で大切なモノを失った。
もうあんな思いは沢山だと、猪々子は伝えていた。
――ああ、そうだな。あんな思いは二度と御免だ。
するりと掌から抜け落ちた命。救おうとしたのに、救いたかったのに……自身のちっぽけさを思い知らされたあの時。
今もジクジクと痛む後悔の傷を、他の誰かに与えたくなど無かった。
にへらと猪々子に笑いかけ、秋斗はふるふると首を振る。
(大丈夫、あいつみたいにはならないさ。確かに俺とあいつは同類だけどさ……友達は大事にする性質なんだ)
何が大切なのかは間違わない。
秋斗は雛里の幸せを望んでいるのだ。いつか黒麒麟に戻った時、自分を想ってくれる優しい友達がきっと止めてくれるから、彼は周りの者達から興味を失うことはない。
そも、記憶を失っても秋斗は秋斗。絆を繋ぎ想いが繋がった友から興味を失うことなど有り得ず、いつだって信じ抜くことしか出来ないのだ。
ほっと一息。
彼の答えを聞いた猪々子は、に
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