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乱世の確率事象改変
黒に包まれ輝きは儚くとも確かに
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た。こんなことで嘘をついてどうする」
「え、いや……あぅ、そ、それはそうですが……」
「ですが、なんじゃ?」
「いえ、だって……こいつは……そ、その……」
「ええい、まどろっこしい! 言いたい事ははっきりと言わんか!」
「ひっ、は、はいっ!」

 怒鳴られ、ビシっと直立した焔耶。そんな二人のやり取りを足を組んだまま眺めている彼は苦笑を零し、隣で目を真ん丸にしている猪々子に話し掛けた。

(なんかアレだ……こいつら俺らのこと言えねぇよな)
(う、うん。あたいが怒られたのって結構理不尽じゃねぇ?)
(クク、許してやれよ、おあいこってことでさ)
(うー……まあ、いいけど)

 お構いなしにぼそぼそと、そんな彼らを見つけてまた焔耶の苛立ちが増す。
 しかし今回は彼らに突っかかることなく、目を瞑ってゆっくりと深呼吸した後、桔梗に己が疑問を零した。

「……桃香様をあんな風にした男に対して、桔梗様はどうして興味を持たれるのですか」

 苦い吐息と悪感情。嫌悪と憎悪が滲み出ていた。
 ふむ、と一つ唸った桔梗は返答に時間を置きたい様子。真摯に見つめる弟子からの疑問に、しっかりと答えない師などいないのだから。

(おいアニキ、何してきたんだよ)
(黒麒麟の主に挨拶してきただけだ)
(それだけであんな恨まれるもんか!)
(知らん。俺が言った言葉で“あの女”がどうなろうと興味ない。此処が痛まなかった時点で“あの女”は俺に必要ないし)

 対して、猪々子も焔耶の発言から疑問をぶつけていた。返された答えはいつも通りに訳が分からないモノばかり。
 トン、と胸を叩いた秋斗から僅かに細められた瞳を見つめて、猪々子はぎゅうと眉を寄せた。

――こんな冷たい目ぇしてるアニキ……初めて見た。

 将にも王にも軍師にも、兵士であっても民であっても、誰に対してであれ確かな感情を向けるはずの彼が、その人物に対して何一つ感情を向けていない。
 言葉通りに、彼はなんら興味を持っていないのだ。敵対も、親和も、嫌悪も、好意も、何もかも。
 だからこそ違和感があった。否定も肯定もしない人間ではあっても、無関心の極限とも言える今の様子が、秋斗という人間に余りにも不釣り合いに思えた。

 胸に冷たい風が吹き抜ける。
 変わってほしくない。猪々子はそう思う。誰に対しても、例え敵であれども冷たいようで冷たくない彼のままでいて欲しいと。

(そんな冷たいアニキ、やだ)
(冷たい?)
(うん、冷たい。あたいはいつものアニキがいい)
(お前が違うように感じるなら……そうなんだろうな。自分でも分からないんだ。なんでこんなに興味を持てないのか)
(アニキに分からないことがあたいに分かるわけないけど……なんかやだ)

 思ったままを口にした猪
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