黒に包まれ輝きは儚くとも確かに
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しには感嘆が浮かぶも、彼の心にはもう一つ別の感情が上がっていた。
――しっかし……あんまりバカ共を見誤らないで欲しいなぁ。
それは呆れ。
苦笑を零した彼は桔梗の瞳だけを真っ直ぐ見つめ、引き裂いた口はただ不敵に、冷徹な目は信頼のみを映し出す。
「クク、バカ言うなよ。此処を何処だと思ってやがる? なぁ……お前ら」
ぐるりと彼が見渡せば、桔梗に向かう幾多の瞳が爛々と輝いていた。
怒りは無かった。不快さも無かった。侮辱も無かった。
只々あったのは、面白いと言わんばかりの不敵さだけ。自分達を簡単に殺せると思っている武将が居るからと、彼らの持つ渇望が荒れ狂う。
秋斗に倣って見回した桔梗は、兵士達の表情を見てぶるりと震えた。恐れからでは無く……死地に立ったかのような武者震いであった。
「……ふふ……いいのう、お主の兵士達は」
戦ってみたい。桔梗の心に浮かぶのはそんな想い。
力と力、心と心、想いと想い……全身全霊、魂の一片に至るまで全てを賭けてこの部隊と、黒麒麟の全てと戦いたい。
どうしようもない戦人の性を抑えるのに必死だった。武人として秋斗と一騎打ちはしてみたい……しかしそれよりも、戦人として、兵士を率いる将として、桔梗は黒麒麟と戦いたくなった。
ぽつりと零された一言は羨望に染まっている。自分の部隊よりも遥かに強い想いを感じ取って、その部隊と共に戦える彼を純粋に羨ましく思った。
数瞬の後、分かってくれたなら結構とばかりに彼は踵を返した。
ゆっくりと歩くこと二歩、おざなりに据えてあった椅子に腰を下ろして脚を組む。尊大に、何処かの覇王のように。
「さて……せっかく来てくれたんだ。そろそろ話を聞こうじゃないか」
凡そ客にするべきでは無い態度は焔耶をまた苛立ちに染める。素直な所は美徳だ、と彼は思うもさすがに口に出さず。
礼儀を失している時点で、儒教を重んずるこの大陸で責められるべきは彼である。焔耶の苛立ちや怒りは当然のこと。昼間の焔耶の発言は、秋斗が今回行った数々の無礼に比べればまだ可愛らしい方だ。
ただし、桔梗は何も責めるつもりはない。袁家大虐殺や真名開示と、常軌を逸した命令を下した二人の内一人である秋斗に対して、そんな事は些末事だと思えるが故に。
礼儀を無視するのなら礼儀を無視して返せばいいだけ。元より堅苦しいのは苦手でもある。郷に入っては郷に従え、である。
「いやなに、実の所会って話したいとは言うたが、儂からは提供する話題など持ってきておらんのだよ」
苦笑が一つ、続けられた言葉に呆気に取られたのは猪々子と秋斗、いや……場に居た全てである。焔耶でさえも目を丸くしていた。
「き、桔梗様……?」
「なんじゃ、悪いか? 儂はただ黒麒麟に興味があったから来
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