黒に包まれ輝きは儚くとも確かに
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「ちょっとバカだけど」
「色気なんて全然ないけど」
「「「「「文ちゃんってすげー」」」」」
控えている彼らでさえ乗っかる始末。もはや客人への対応としては最悪の部類であった。
ふるふると、焔耶は拳を固めて震えていた。桔梗は気にしていないようで、楽しい余興だと言わんばかりに喉を鳴らしている。
「てめぇら……いいぜ……あたい、久々に頭にきちまったよ……」
「来いよ文ちゃん!」
「武器なんざ捨てて掛かって来い!」
「ああ!? てめぇら――――」
「いい加減にしろ!」
怒声一喝。
ついにはち切れた怒りが焔耶の口から溢れ出た。背中には燃える炎を幻視しそうな怒気。
睨みつけられた猪々子は、やっちまったというようにぽりぽりと頭を掻いて頭を下げた。
「ご、ごめん、なんか楽しくって」
「なんかとはなんだ! 客をほっぽらかしてふざけ合うのがお前らの流儀か! 軍の程度が低すぎる!」
素で挑発を続けてしまった猪々子は、そういえばと秋斗のおちょくりを思い出して矛先をそちらに向けた。
「悪かったって! ってかアニキのせいだし!」
「まあそうだが……つまんねぇ空気になるくらいならこっちの方がいいと思ってな。非公式の会合で取り引きするわけじゃあるまいし、“武器持ってきてる将二人相手にまともな客対応なんざするわけねぇだろ”」
すらすらと語りだした彼が最後の言葉を言い切ると共に、焔耶に鋭い視線が突き刺さる。
細めた目からは殺気がにじみ出る。礼儀など取る相手では無い、お前らを客としてなど見ていない、そういった敵意を振りまいて。
びくりと肩を跳ねさせた焔耶は、ぐっと少し身を引き言葉が止まる。
――こやつ、初めから焔耶に突っかからせるつもりで……これ以上は儂が相手にするべきか。
内心でごちた桔梗が……す、と一歩足を進める。
笑みを崩さず、圧されることもなく、黒瞳に確りと黄金を合わせ……ぺろりと己の唇を舐めとった。
「くくっ、入り口で外させろと言わんかった男がよう言う」
「殴り込みに来るってんなら武器を取り上げちゃ面白くない。間違いでも起こしてくれた方がこっちとしては助かるんでね」
「ほう……此処に居る誰かが死ぬことで利を得たかった、と?」
突き詰めればそういうこと。彼の発言は、桔梗達が兵士を殺してくれた方が好都合だと言っているに等しい。
意図して不審を与えさせるような言い方に、彼が感じるのは不快ではなく感嘆。
――なるほど、やっぱり好戦的な戦バカってわけじゃないらしい。こりゃあ骨が折れる。
評価を下すのなら上手さではなく、狡さ。
思考誘導は何も秋斗だけの専売特許では無いが、昼間の仕返しとばかりに行ってきた辺り、桔梗の経験が読み取れた。
ただ、切り替え
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