黒に包まれ輝きは儚くとも確かに
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る道理は微塵も無い。自分達の指標である“あいつ”に出来たなら……今も戦い続けている自分達に出来ないはずがないではないか。
こんな絶好の機会を与えられて、黙っていることこそ間違いだ。
秋斗は彼らの想いを間違えず、彼らも秋斗の理解を間違えない。
「あいつらは大陸で最強の一己大隊、袁家を絶望に落とし、孫呉を蹂躙し、幾多もの戦場を地獄に変えてきた……“徐晃隊”なんだぞ?」
今は失われた部隊の名を聞いて彼らの心が震える。嗚呼、嗚呼、と涙さえ零れそうになる。
血反吐を吐き続けて研鑽してきたのは誰の為か。
俺達はいつだってたった一人の主にしか従わない。
正しい名で呼んでくれとどれほど願っただろうか。
主の為の部隊で居させてくれとどれほど希っただろうか。
まだ……まだ戻らないが、一緒に泥だらけ血だらけになって強くなってきた主なら、此処で俺達を信じぬはずが無い。
主とは違えども、“俺達と同類の徐公明”がそう呼ぶのなら、今一度……真の名を以って我らの想いの華を此処に咲かせ、徐公明の心の内に居る“愛しい主”に届けよう。
至り、個人個人の想いが最高潮まで昇りつめた。
「魏延の武器はそれしかないんだろ? 慣れない武器で戦われてもこいつらは満足しない。殺すつもりで掛かればいい。誰も恨みやしねぇんだから」
「ああ、構わねぇ。こんな場所で殺されるならその程度ってこった。第四部隊の隊長として相応しくねぇから死んで正解だ」
何処からか、カラン、と槍と剣が投げられた。戦場で使うモノとは違う訓練用の武器を見て焔耶の怒りが頂点に達した。
「こいつを殺したらお前が戦え、徐公明」
焔耶の前に進み出た部隊長を見て、直ぐに秋斗に視線を戻して呟いた。
小さくため息を吐いた秋斗は焔耶と目を合わせようともしない。
「……いいだろう、勝てたらな」
そんな事態にはならないと、秋斗は緩い笑みを浮かべて受け流す。
部隊長が武器を拾うと同時に、ごそごそと懐を漁った彼が一枚の硬貨を取り出した。
「そろそろ始めよう」
握った拳、親指の上に乗せた硬貨は戦いの合図。
大きく息を吸った部隊長は腰を低く落とし、右手に剣を左手に槍を構えた。
金棒を片手で軽々と一振り、肩に構えた焔耶はやっと部隊長と視線を合わせる。
「魏文長……お前を殺すモノの名だ。脳髄に刻むがいい」
「くくっ……俺は徐晃隊”第四部隊長。名は名乗らねぇが許してくれ」
「ふん、構わん。どうせすぐに忘れる」
「いや……お前が心の底に刻むのは俺の名じゃないからだ」
「なに?」
部隊長は笑っていた。子供のように純粋でありながら、渇望に彩られた不敵さで。
これほど嬉しいことがあるか。今の徐公明ではなく、部隊長の自分
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