黒に包まれ輝きは儚くとも確かに
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えないってか?」
「発言の責任は自分で取れって言ったのアニキだろ!?」
「別に強要はしてないんだが……なんだ、戦いたくないのか……じゃあいいや」
ため息一つ、同時に猪々子の心になんともいえないもやもやしたモノが湧く。
せっかくなのに、と悪戯好きな子供のように拗ねた彼は、ぐるりと辺りを見回した。
一人一人兵士の顔を見定めて、にやりと笑う。
「……知ってるかお前ら。魏延はな、えーりんの護衛にはお前らじゃ足りないっていいやがったんだぜ?
男などにえーりんは守れない、兵士では将には敵わない……だってよ」
昼間の発言を聞いていたのは二人。あの時は軽く流していた。別に気にすることでも無いのだからと。
それは“戦場で出会った時に分からせてやろう”と思っていたから気にしなかったのだ。今の状況で彼が何を言いたいのか、二人は理解出来た。
「隊長、そりゃ本当か?」
「言ったな、連隊長も聴いてるぞ」
「ああ、俺らのこと知らないから無理もねぇとは思ったけど」
「へぇ……俺らが守れない、ねぇ……」
誰もが、その場に居る全ての第四部隊のモノ達が、不気味に笑いを浮かべていた。
嘲りとは違う、侮蔑とも違う、呆れとも違う……彼らが浮かべているのは、面白い、とただそれだけの子供のような感情。
連隊長と部隊長がふっと小さな吐息を漏らした。一歩前に出て、彼らに向けて手を広げる。
「誰か行きたい奴はいるかよ?」
「バカ言え、皆行きたいに決まってる。なぁ、お前ら」
部隊長の返しには……ざ、と乱れなき軍靴の音が応えた。
ばらばらと乱れていた彼らの列は一歩だけの動きで隊列を為し、胸に手を当てる小さな動きで想いの在りかを指し示す。
『応っ』
一寸の間を以って、彼らは黒麒麟の身体としての姿に切り替わった。一糸乱れぬ確かな返答。重厚な彼らの声が夜天の空へと重なり合う。
連隊長と部隊長がくるりと回り、彼に向けて不敵に笑い掛けた。
「楽しい舞台を用意してくれてありがとよ」
「文ちゃんが行かねぇなら、俺らの誰かが行っても構わねぇよなぁ?」
ポカンと口を開けたのは猪々子。敗北すれば徐公明が劉備軍に入ると約束した戦いを、彼らが代わりに行いたいとそう言っているのだから驚いて当然。
秋斗を見ると、楽しそうな顔で目を細めていた。何一つ不安を浮かべていない、其処にあるのは彼らへの絶対の信頼……否、狂信だけ。
「たった一人だけで?」
「それがどうした」
「相手は武将だが?」
「だからなんだってんだ」
「責任重大な戦いなんだぜ?」
にやりと、全員が笑った。皆の意思を声にして上げるのは、腕を組んで一番前に立つ二人。
「「だからこそ面白ぇ!」」
彼の行く末を賭けていようと、自分
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