黒に包まれ輝きは儚くとも確かに
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猪々子さえ気にせずに。
「今此処で試合をして、俺を倒せたのなら益州には何もせず、ただの使者として仕事だけ終わらせて帰ってやる。なんなら俺一人、曹操軍との協力関係を切って劉備軍に戻ってもいい。お前如きに勝てないようじゃ曹魏五大将軍とは言えないんだからよ。ああ、俺が勝ってもお前らには何も求めんから安心しとけ。
クク……“お前が劉備の代わりに俺を倒して、劉備の理想は正しいと証明してみせろ”」
唖然。
桔梗と猪々子は突然のことに着いて行けず、周りで見守っていた兵士達も彼の発言に度肝を抜かれた。
よもや、争いごとを好まない彼の方からそんな提案をするとは思わなかった。
わなわなと震える焔耶の瞳には怒りの炎が燃えている。桃香の論を解そうともせず、己よりも下だと見下され、此処まで言われては黙って居られない。
「私を侮るなよ……黒麒麟。いいだろう。その勝負、受けてやる。
桔梗様、お許しください」
「……いいじゃろ。其処まで言われて受けぬは武人の恥。好きにせい」
敵から仕掛けられた誘いではあっても、焔耶の心を思えば止めるわけにもいかず。
――始めっから戦うつもりじゃったな、黒麒麟め。何を狙っておる。
挑発も不遜な態度も、全ては焔耶を煽る為だと遅れて気付く。
何を狙っているのかは分からない。ただの力試しとも思えない。桔梗の判断では焔耶に勝ちの目は無いが……彼の得られる利が不明過ぎて不気味に思った。
「お前じゃ俺に勝てない。街でよく観察させて貰ったが……お前は俺の可愛い部下のこいつよりも弱い」
「ふぇ!?」
ポンと頭に一つ手を置かれて、急ぎ彼の顔を見るとやはり楽しげ。ついと向けられた流し目には、信頼と期待だけが浮かんでいた。
「元袁家の二枚看板とはいえ、たかが部隊長に私が劣るだと?」
遅れて、焔耶の鋭い眼差しが猪々子に向く。
バトルジャンキーな彼女の心に一寸だけ戦いたい欲求が湧く。どうしようもない武人の性は、目の前のモノで力試しをしたくて堪らなかった。
しかして、彼女は“そんなモノは二の次だ”と欲求を振り払った。合わされた視線から目を逸らすことによって。
「で、でもアニキが戦うんだろ?」
「お前が戦いたいって言うなら俺の代わりに戦ってもいいぞ。どうせあいつだって劉備の代わりなんだ。代役同士で戦うってのもいいもんだろ」
「ええ!? やだよ! それってアニキの行く末をあたいが背負うってこったろ!?」
約束を守るのが彼だから、代わりに戦って負けたのならどうなることか。
負けるつもりなどさらさらないが、さすがに他人を、しかも曹操軍にとっての最重要人物を賭けの対象にすることは出来なかった。
彼女にとって賭けとは、自分のナニカを賭けるからこそなのだ。
「背負
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