黒に包まれ輝きは儚くとも確かに
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こんな程度の世界で妥協するつもりは無い。争いを起こすし人を殺すし国を滅ぼす。中途半端で妥協したら手に入らないモノがあるんでね」
「妥協だと!? 人が傷つかない今を妥協と、お前はそう言うのか!」
「叩き潰さないと安心出来ない。明確に示さないと確信出来ない。完全敗北しなけりゃ理解出来ない。隣の芝は青く見えるし、友達が食べるケーキは甘くて美味しそうに見えちまう。人間ってのはそういうもんだ」
「訳の分からない例えを……だから、決めつけるなと言っている! 現に今の益州は――」
――水掛け論をしても意味ないんだが、分かってないのかこいつ。
「ちっ……いいか魏延……これ以上は平行線だが言ってやる」
舌打ちを一つ。珍しく苛立ちが湧いた秋斗は、焔耶の言葉を遮って睨みつけ、歯を剥いた。
「俺とお前が分かり合えないように、誰かと誰かは分かり合えない。人が人である限り、争いってのは無くならん。それを事前に防ぐ世界を作るのが俺達の目的なんだが、今の大陸じゃ不可能だ。
言葉で言い聞かせようとしても、俺にとっちゃお前の理論はただの押しつけでしかない。説き伏せられない時点で落としどころを見つけるしかない……が、お前も俺もそれをしたくないってわけだ。
そんな時、理論を推し通すには力付くで認めさせるしか方法は無い。だからお前が今語ってる借り物の、劉備の持論を……俺を力付くで叩き伏せることで認めさせるがいい」
――力付くな時点で矛盾してるが。
内心で思うだけで、彼はそれ以上言わない。言うつもりもない。
例えば、犠牲を増やすような策を非難していたモノが、心満たされたいからと乱世を広げるような矛盾。
例えば、人の生死を慮るモノが、自分の幸福の為にと人の死をより増やす乱世を広げるような矛盾。
桃香の矛盾はそういったモノに似ている。結局は力に頼ってしまうことこそ、彼女の矛盾で理論破綻。
背反する二律事象を……受け止め、呑み込み、背負えるか否か。桃香の理想を語るというのなら、彼女の矛盾を理解して居直れるくらいでなければ秋斗との論舌には勝てない。
昔の秋斗が桃香と話していれば、少し違いはあるが、きっと今の彼と焔耶のようなやり取りになったことだろう。
分かり合えず、落としどころを見つけることも出来ず、互いが互いに距離を置き、内部から崩壊し全てが台無しになってしまう。
根気よく語り掛け続けても変わらないモノはあるのだ。それほど、秋斗の思考は桃香の思想と相入れない。
――まあいい。これでやっと“俺の予定通り”だ。
矛盾を突くことは出来る……が、彼はしない。内心でコトが進んだとほくそ笑んだ。
「ちょ、アニキっ! 何するつもりだ!?」
椅子から立ち上がり、彼は剣に手を掛ける。どよめき立つ周りにも、
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