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東方乖離譚 ─『The infinity Eden』─
episode3:掛かったなHがッ!
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。立っているのさえ苦痛だ。力なくその場に倒れこむ。

「?……ぁ"あ"っ!ぁ"っぁ"あ"っ!げぁ"ぁっ……!」

 口から血の塊が飛び出してきた。へぇ、漫画やアニメ、ドラマなんかでしか見たことは無かったのだけれど、吐血というのはこういった物なのか。初めて知った。腹を貫かれてまで知りたくも無かったけど。

 ──痛いイタイ痛い痛いイタイ痛いいたい痛い痛いいたい痛い痛いいたい痛いいたいイタイいたい

 口から、誰にも聞こえないくらい小さな言葉が出てくる。成る程、腹を貫かれると人はこんな反応をするのか。また一つ知った。
 子供は無事だろうか。ああ、よかった。元からの足の傷以外には目立った外食は無い。傷を負ったのは私だけのようだ。

 ……なんて現実逃避が、何時までも続く筈もなく。

「うあ"あ嗚呼ああぁぁぁぁああぁああああっ!」

 痛い痛い痛い痛い痛い!死ぬ!本気で死ぬ!ふざけてる場合じゃない!
 声を出すにも、叫び声以外の声が出ない。少しでも気を緩めれば死ぬ。終わる。
 何だ。何が起きた。あの妖怪が何かをしたとは思えない。じゃあ一体──

「ひぃっ??」

 少年の声が聞こえた。何事かと掠れる目で追ってみれば、何か紅い触手のようなものが少年へと迫っている。その先端は酷く尖っていて、鉄程度ならば容易く貫けそうだ。よく見れば、先程の妖怪までとはいかずとも、全身に岩の表皮を纏っている。理解した、先程の妖怪とこの妖怪は二体で一体。片方が誘い込み、片方が罠に掛かった獲物を仕留める。多少頭の良い妖怪らしい。今頃『掛かったなアホがッ!』とか言ってるんだろ分かってるんだよ。って普通に何を巫山戯てるんだアホか私は。
 よくよく見れば、その触手は血に濡れていた。恐らく、アレが私の腹を貫いたのだろう。今でも目を背けたくなる様な痛みが襲い続けてくる。もう嫌だ。逃げたい。ああもう、どうでも良いからさっさと帰らせて──

「……げ……て」

 不意に、口から声が溢れた。不思議だ。特に何を言おうとした訳でもないのに、勝手に声が出る。

「にげ……な、さい……っ!」

 何故今更そんな事を。無駄な事だ。今更逃げられる訳が無い。よっぽどな事でも起きない限りは──

 ──そういえば、今まで『限りは』とか思った途端に、状況ひっくり返ってるなぁ

 フラグですね知ってた。

「逃げなさいと……言っているでしょう!」

 意味も無く、地面を殴りつけた。
 呪詛が、周囲に広がった。

「ギィッ!?」

 異常を感じ取った妖怪が、すぐさま後退する。背後に迫っていた鈍い方の妖怪は、逃げる間も無く呪詛に飲み込まれた。

 途端に。


 キュリィィイィィィィィィィィイィィィィィィィンッ!


 耳を塞ぎたく
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