番外編・弟と別れてから
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体中に大怪我を負ったシュウくんを残し、私の姿は消えた。消えた後も少しの間だけ、私の意識はそのまま漂い続けていた。
「姉ちゃん?!! 姉ちゃん!!!」
シュウくんには私の姿がもう見えてないようで、必死に私を呼び、私に触れようとして周囲を手で探っていた。
―シュウくん!! 私はここだよ!! お姉ちゃんはここにいるよ!!
私も必死に声を出し、もう私にすら見えない私自身の手で、必死にシュウくんの手を取ろうとしたが、すでに彼に触れることは叶わなかった。
「ね゛え゛ぢゃぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
私が見た最後のシュウくんは、私の耳に針のように刺さる声で、必死に私に呼びかける姿だった。そのシュウくんの声を聞き、泣き叫ぶシュウくんの姿を見ながら、私の意識は遠のいていった。ごめんなさい。シュウくんごめんなさい……
気がついた時、私はかつてレ級と戦った海の上に呆然と立ちつくしていた。
「あれ……私……」
まるで不思議な夢を見たあとの朝のような感覚だった。あの日レ級ともみくちゃになって海中に引きずり込まれてから今日まで、まるで長い夢を見ていたかのような感覚だ。不思議な事に、こうしていざ戻って海の上に立っていると、あっちの世界で過ごした楽しい日々に今一現実味が感じられなかった。
でも、あの楽しい日々も、大切な人との出会いも、すべて現実だった。今私が手に持っているバットが、すべてを物語っている。
「比叡?! 比叡デスか?!!」
「比叡お姉様?!」
「ウソ! 比叡さんいた?!!」
もう何年も聞いてなかったかのように懐かしい声が背後から聞こえた。振り返ると、金剛お姉様たちを始めとした艦隊が、私を見つけて一斉にこちらに向かってきていた。
「お姉様……?」
「比叡! ひえーい!!」
まず最初に金剛お姉様が私に飛びかかってきた。私は猛スピードで抱きついたお姉様の勢いに押され、そのまま海面に倒れこんでしまった。
「比叡お姉様ー!!」
「比叡さーん!! 会いたかったよー!!」
倒れてしまった私と金剛お姉様に、更に榛名と鈴谷も倒れこんできて、私たち4人はもみくちゃになってしまった。
「うわっぷ……こ、金剛お姉様……く、苦しいです」
「何言ってるデース! まったく世話を焼かせる妹デース!!」
「本当に……比叡お姉様……よくぞご無事で……」
「毎日ずっと探してたんだよ? ホント、見つかってよかった……」
金剛お姉様が泣きながら私の頭をもみくちゃにしてくれる。榛名も鈴谷も私にしがみついたままポロポロ涙を流してくれている。霧島と加賀さんは私たち四人とは少し離れているが、二人とも笑顔で私を見守ってくれていた。
「帰ってきたんだ…
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