番外編・弟と別れてから
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に、鎮守府に戻って来られた喜びが私の胸に実感として広がっていった。
でも、一人足りない……。
「比叡さん比叡さん、一つ聞いてもいい?」
ひとしきり盛り上がってる時に、オレンジジュースを片手に暁がこう言った。
「ん? 暁ちゃん、なに?」
「今まで比叡さん、どこで何をやってたの? だってあの海域にずっといなかったんでしょ?」
―チクッ
「え……えーとね……」
「あ! 私も聞きたいのです!」
「そうだね。私も興味があるな」
第六駆逐隊の面々が皆、目を輝かせて私の方を見る。締め付ける感覚が私の喉を襲い、声を出そうとすると力が抜けて声が出なくなった。あの日々の思い出は私にとって楽しい思い出のはずだ。それなのに、思い出そうとすると胸がチクチクと痛み、喉が震えて声が出なくなる。なぜだろう。
私の様子を見ていたのか、金剛お姉様が話に割って入ってくれた。
「そういう話はまた今度でいいデース!! 今日は比叡が帰ってきたことが何よりめでたいんですヨー!! なんせ“比叡さんおかえりさないパーティー”なんだからッ!!」
「ぇえ〜! でも聞きたいー!!」
「ツッキー? 一人前のレディーは物事を急がないものデスヨー?」
「そ、そうなの?」
「そうデース! そしてもちろん、ツッキーは一人前のレディーデスヨね〜?」
金剛お姉様はそう言いながら、暁ちゃんには分からない角度で、私にウインクをして見せた。さすが金剛お姉様……暁ちゃんの扱いに……というか駆逐艦の子の扱いに長けていらっしゃる……。
「そ、そうよ! 私は急がないわ!! だって一人前のレディーなんだもの!」
「おーけー! さすがツッキーは一人前のレディー!!」
「もちろんよ! だって私は、一人前のレディー!!」
「いえーす! なぜならツッキーは〜!!」
「「一人前のレディー!! かんぱーい!!」」
金剛お姉様と暁はこう言いながら肩を組んで、それぞれお酒とオレンジジュースを一気飲みしていた。助かりました金剛お姉様……ありがとうございます。
ひと通り、久々の鳳翔さんの料理に舌鼓をうった後、パーティーはお開きとなり、私達は各々自分の部屋に戻った。私は今日、数カ月ぶりに自分の部屋に帰ってきたのだが、私が向こうに行く前と比べると、キチンと整理整頓されていたのがまず驚いた。ベッドも洗濯したてで糊の効いた綺麗なシーツが敷かれていて、寝転ぶととても心地いい。いつ私が戻ってきてもいいように、金剛お姉様が毎日部屋を掃除し、シーツを張り替えてくれていたそうだ。
「はぁ〜……久しぶりの鳳翔さんの手料理……美味しかったなぁ〜……」
窓のカーテンを開けた。私の部屋の窓からは、天気が良ければ夜になると月が見える。そして今夜は月がとても綺麗な夜
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