11.姉ちゃんが消えてから
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何度も味わった感触だ。
「仕方ないですね。代わりに私が撫でてあげます」
「……なんだそりゃ」
「私でよければ、代わりにいくらでも撫でてあげます」
「……」
「私は、先輩の元からいなくなったりしませんから」
「……そっか。ありがとう」
秦野は的確に僕が置かれた状況を察してくれる。正直、超能力者なんじゃないかと思うことがある。今回だって、僕は詳細を彼女に話してない。それなのにすべて察してくれた。どうして彼女は、僕が置かれた状況をこんなにも的確に察してくれるんだろう。
「……わかんないのは先輩だけです」
「そおなの?」
「はい。先輩、超絶鈍感クソ野郎ですから」
「ひど……やっぱお前、僕のこと先輩だと思ってないよね」
「超絶鈍感クソ野郎だと思ってます」
「ないわー……まじでないわー……しょぼーん……」
「また来ますよ。超絶鈍感クソ野郎の頭を撫でに」
秦野はその言葉通り、何度も足を運んでくれ、こうやって時々頭をなでてくれた。暇をもてあます身だった僕にとってはとてもうれしい話なのだが、部活の方は大丈夫なのかと余計な心配をせずにはいられなかった。まぁ秦野なら大丈夫だろうけど。
そして、あと数日で退院という日のことだった。その日秦野は急用で来ることはなかったのだが、その代わりクラスメイトが来てくれた。来たのは稀代のキモヲタにして僕とは腐れ縁の男、岸田だ」
「だから声に出てんぞ。なんだそのモノローグは。つーか秦野って誰だよ」
「部活の後輩の子」
「このリア充めぇええエンッ?!!」
この時、岸田は僕のデリカシーのかけらもないモノローグを聞き、心に治癒しがたいダメージを負ったと後に語っていた。
「まぁいい。お前に見せたいものがある」
「ひょっとして、艦これの何か?」
「おう。多分お前には関係大有りだからな」
まだ胸がチクチクと痛む。正直なところ、今は艦これの話を聞きたい気分ではなかった。岸田は一度自分の家に戻ってからお見舞いに来てくれたのだろうか。かばんからノートパソコンとポケットwi-fiを取り出し、ノートパソコンの電源を入れてパチパチとキーボードを叩き始める。『かんこれ』といういつもよりも静かな声が聞こえ、よせばいいのに岸田はこの公衆の面前で艦これを起動させたのが分かった。
「岸田……他の人もいるんだから今ここで起動させちゃダメだよ……」
「いいから見てみろ」
岸田はノートパソコンの画面を見せてくれた。画面は艦これの母港の画面になっていて、すでにセッティングを済ませた状態で持ってきたのだろう。秘書艦が比叡になっていた。ただ、僕が知っている比叡とは、艤装がなんだか違う気がする。Xアームじゃない……。
「おう。お前が入院した日に比叡たんが戻ってきてたんだけどな。知らんう
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