第一部
第六章 〜交州牧篇〜
八十七 〜決死の攻城戦〜
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うむ。気をつけて外に出よ」
そして、ゴトゴトと音がして、前方から光が差した。
鈴々に続き、城内へと足を踏み入れた。
璃々の話通り、薄暗くて目立たぬ一角であった。
周囲を警戒しながら、皆が揃うのを待つ。
「では、手筈通りに。急げ!」
「応っ!」
それぞれが、指示通りに散っていく。
「では歳三さま。私は城門を」
「頼んだぞ、明命」
我らだけでは城内を制圧するつもりなど、最初からない。
城内に混乱を巻き起こし、然る後に城門を開けて我が軍が突入する手筈だ。
「さて、では始めるとするか」
「合点なのだ」
懐から小瓶を取りだし、中身を辺りに振りまく。
そして、鈴々が松明をそこに投げ込んだ。
途端に、勢い良く炎が上がる。
「にゃあ? す、凄いのだ」
「見とれている場合ではないぞ、鈴々。次だ」
「わかったのだ!」
これは草生水、所謂燃える水。
薬品として扱った事はあるが、菜種油よりもよく燃えるという特徴がある。
無論、その分だけ使えば危険も大きいが、少量でも炎を上げる為にこのような場合は効果覿面だ。
鈴々は素早く次の場所でも火を付けた。
家屋に放火するのは庶人に危害が及ぶ恐れもあり、それに万が一真相が知られると好ましい事はない。
それ故、城壁や延焼の恐れが低い場所を選んでおいた。
「火事だ!」
「裏切り者が出たぞーっ!」
それに合わせて、我が軍の兵士があちこちで騒ぎ立てる。
「誰が裏切りやがった!」
「おい! あっちからも火の手が!」
忽ち、城内が騒然となる。
「何だテメェらは!」
その一部が、我らを見咎めたようだ。
「そうだな。貴様らのような屑を成敗しに参った、と言えばわかるか?」
「て、テメェ土方軍だな!」
「そうだと言えば、どうする?」
「しゃらくせぇ! ぶっ殺せ!」
全員が抜刀し、向かってきた。
人数は……凡そ二百というところか。
「鈴々」
「任せろなのだ!」
「ぐわっ!」
抜き打ちに一人を斬り倒す鈴々。
「このガキ! 死ね!」
「へへーん。そんななまくらでは鈴々は斬れないのだ」
「うぎゃっ!」
「がはっ!」
巧みに身を躱しつつ、鈴々は次々に賊を斬り伏せていく。
「な、何だこのガキは!」
「なら、テメェからだ!」
数十人ほどが、私に打ちかかってきた。
「皆、相手は人に非ず。容赦はするな」
「応!」
兵らも抜刀し、忽ち激しい乱戦となる。
「む!」
「ぎゃっ!」
月が雲から顔を覗かせたようだ。
その光に、兼定が青白い光を放つ。
「あの剣……まさか」
「それに、このチビ……」
「ふっ。どうかしたか?」
「て、敵の総大将だぜ!」
「馬鹿野郎! そんな訳ねえだろ!……うぐわっ!」
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