第一部
第六章 〜交州牧篇〜
八十七 〜決死の攻城戦〜
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さんの寵愛いただかなくても?」
……全く、緊張感のない奴だ。
尤も、この程度の戦であまり気を張り詰めているよりは、この方がいいのかも知れぬがな。
その夜。
睡蓮らを加えた軍議でも、これといった妙策は出なかった。
数の上ではほぼ互角か、やや此方が多いとは申せ、城攻めにはやはり困難が伴う。
攻城兵器でもあれば別だが、衝車や投石機の類など用意がある訳もない。
原理ぐらいならば知っていても、それを実際に開発するとなれば相応の技術者と費用、それに期間が必要となろう。
交州に腰を落ち着けてまだ日も浅い我らには、そんな余裕などあろう筈もなかった。
それはまた、睡蓮も同じであったのだが。
「数は五万、それに変わりは無しか」
「はい。賊将の区星は不在でしたが、糧秣は近隣から強奪した物が山積みになっていました」
明命の報告に、一同から溜息が漏れる。
「つまり、兵糧攻めって訳にはいかねえんだな」
「その通りじゃな、堅殿。そして、儂らにはそれに抗するだけの糧秣はない」
「となれば、敵をどうにかして城から誘い出すか、内応を試みるか……稟、どうだ?」
「はっ。挑発も手ですが……ただ、賊軍は我々に連戦連敗です。そのぐらいで打って出てくるかどうかは……」
「ふむ。風は?」
「ぐー」
「寝るな!」
彩に小突かれ、風は眼を見開いた。
「おおう。つい、皆さんの熱気にウトウトと」
「熱気で眠くなる奴があるか、全く。ご主人様がお訊ねだぞ」
「そうですねー。紫苑さんにも聞いてみてはどうでしょうー?」
「地の利、か。……星、紫苑のところに参り、すぐに来るように申せ。その間、輜重隊の警護はお前が務めよ」
「御意!」
程なく、紫苑が姿を見せた。
……が、天幕に入ってきたのは一人ではなかった。
「おいおい、璃々まで連れて来たのかよ?」
睡蓮が肩を竦める。
「申し訳ありません。どうしても、と聞かないものでして」
「むー、璃々だけ仲間外れはいやだもん」
「まぁ良い。璃々、大人しくしていられるな?」
「うん」
「わかった。早速だが紫苑、長沙の郡城を攻めたいのだが」
頷く紫苑。
「特に堅固な城、という訳ではありませんわ。城壁もあちこち破損したままですし」
「ですが、人が通れる程の穴とまではいきませんよね? 紫苑殿?」
「ええ、流石にそこまでは。それに、壊れたところがそのままという事もないと思うわ」
「でしょうね。私の方でも偵察して来ましたが、そうした箇所はありませんでした」
「内応も難しいと思います。そういった隙は見当たりませんでした」
疾風と明命の言葉が、雰囲気をより重くする。
とにかく、手の打ちようがないのだ。
「もう一度、策を練ってみます。何か、手がある筈です」
「ですねー」
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