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八神家の養父切嗣
二十四話:存在否定
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うなんて言って、罰に甘えて償う心を忘れたらあかんよ」
「あ…ぁあ…っ」

 その通りだった。罰を受けることで楽になりたかった。
 罰を受け、償っていると己の心を安心させたかった。必死に己を正当化していただけ。
 衛宮切嗣という男はこれだけの罪を見せつけられても、どこまでも利己的で独善的だった。
 こんな人間だからどれだけの悲劇を起こしてきても平然としていられたのだ。
 自分のことながら反吐が出そうになる。

「おとんは今から必死に生きて償っていかんといけんのや」
「僕に……何ができるというんだい? 殺すことしかできない僕に?」

 大粒の涙を流しながら問いかける。
 こんな自分に殺し以外の何ができるというのだ。
 救うことすら放棄して、ただの人殺しに成り下がっていた自分に。
 一体全体、何ができるというのだろう?

「それは自分で考えんと。私が示したら罰と一緒やん」
「そう…だね」
「まあ、そんな落ち込まんといて。それにおとんは―――誰かを救えるよ」

 電撃が走ったかのように目が開く。
 こんな罪深い自分に誰かを救うことができるというのだ。
 人殺ししかできない衛宮切嗣という男に救える人間がいるというのだ。

「おとんに救われた私が言うんやから間違いない」

 屈託のない笑顔で笑うはやての姿に言葉が出ない。
 茫然とした表情でただ見つめることしかできない。
 そんな親子の元にクロノが向かってくる。

「すまないな。水を差してしまうんだが、もうじき暴走が始まる。主としての意見を聞きたいから集まってくれないか」
「そっか、まだあの子のことが終わってないもんな。おとんはどないするん?」
「あなたは……すまないが拘束されてくれないか。立場上、これ以上放置することができない。……本当にすまない」

 深々と頭を下げるクロノの様子にどうして自分の周りにはこうも真っすぐで優しい人間ばかりいるのだろうと自虐する。
 今の今まで執務官という立場があるにもかかわらず放置していただけでもかなりの温情があるのだ。断る理由も気力もなく切嗣は小さく頷く。

「すまないが、アリアと一緒に大人しくしていてくれ」
「待て、このバインドは―――」
「時間がない。八神はやて、すぐについて来てくれ」

 切嗣が静止の声を上げるのを無視してクロノははやてを伴い飛び去って行く。
 切嗣は軽く息を吐きながらかけられたバインドを眺める。
 一見すれば強固なバインドだが、その実、簡単に壊すことが可能だ。
 恐らくは逃げられずに暴走に巻き込まれる危険を無くすための配慮なのだろう。
 何とも、業務に忠実で優しい執務官だと内心で感嘆する。

「それにしても……僕は、どうやって償えば……」

 防衛プログラムの巨大
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