暁 〜小説投稿サイト〜
姉ちゃんは艦娘
10.姉ちゃんは艦娘
[1/9]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 何度も足が縺れそうになりながら、僕は港に向かって走り続けた。右手に持つ比叡さんのバットが何度も手から滑り落ちそうになり、その度に僕は改めて右手に力を込め、金属バットを握り直した。

「姉ちゃん……負けるな……姉ちゃん……」

 港が近づくと共に、恐らくは砲撃音だと思われる『ドン』という音が近づいてきた。貨物船はすでに炎上しており、貨物船からは次々に脱出ボートが投げ込まれていた。

 一方、貨物船を挟んで避難する人たちとは反対側では、比叡さんとレ級が戦っているのが、僕が今いる場所から見える。比叡さんは微動だにしないレ級の周囲を周りながら攻撃しているようで、比叡さんのXアームが何度も砲撃を繰り返していた。

 不意に、比叡さんの動きが止まった。何かに注意が逸らされたようで、比叡さんは貨物船の方を見た。

「姉ちゃん危ない!!!」
「シュウくん?!」

 比叡さんが僕にも気がついた次の瞬間、一瞬で比叡さんとの距離を縮めたレ級が、比叡さんの身体を蹴り上げた。

「ガフッ……!!」

 比叡さんの身体は信じられないほど軽々と吹き飛び、こっちに向かって飛んでくる。ヤバい。このままじゃ比叡さんは地上の貨物倉庫に突っ込む……

 そのままの勢いで比叡さんは貨物倉庫に直撃し、倉庫に大穴が空いた。比叡さんは死んだのだろうか……

「ひぇぇえええ……やっぱり……強い……」

 よかった……。信じられないことだが、比叡さんは無事だった。粉塵の中から傷だらけの身体を引きずりながら、比叡さんは姿を見せた。

「姉ちゃん……」
「シュウくん……ここにいたら危ないよ?」
「姉ちゃんは……姉ちゃんは逃げないの?」
「お姉ちゃんはね……アイツを倒さないと……」

 比叡さんは再び、海上のレ級を睨む。一方レ級は不敵に笑い、そのしっぽのような部分から猫ぐらいの大きさのドローンのようなものを発射したのが見えた。

「艦載機?!」
「かんさ……?」
「シュウくん!!」

 比叡さんが突然僕を押し倒し、僕に覆いかぶさった。次の瞬間、さっきレ級が飛ばしたドローンのようなものから比叡さんと僕に向かって爆弾が落とされ、僕と比叡さんを中心に、周囲が爆発した。爆弾の投下はとどまることを知らず、比叡さんめがけて何度も何度も投下され、その都度比叡さんとその艤装にダメージを蓄積させていく。

「姉ちゃん……ッ!!」
「シュウくんはお姉ちゃんが守るから……ガッ……任せてッ……」

 比叡さんの後頭部に敵の攻撃が直撃し、比叡さんの額から血が流れた。口からも血を飛ばし、それが僕の顔にかかった。

「姉ちゃんもういいよ! 逃げよう!! 後は警察に任せて逃げよう!!」

 涙が出てきた。何も出来ない。僕は何も出来ない。比叡さんがこんなに頑
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ