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姉ちゃんは艦娘
10.姉ちゃんは艦娘
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よ!!」
「……」
「好きなんだよ!! 姉ちゃんのことが好きなの!! だから帰らないでよ!!」

 死にもの狂いで口をついて出た本音だった。僕は比叡さんのことが好きになっていた。いつも一緒にいて、お日様のような笑顔で僕の心を暖かくしてくれる比叡さんが、いつの頃からか好きになっていた。だから帰ってほしくなかった。だから、ずっとずっと一緒に生きて行きたかったんだ。姉ちゃんの隣りにいたかったんだ。

「私だって……帰りたくないよ……」

 比叡さんがワナワナと震えだし、顔を上げた。比叡さんの澄んだ両目からは涙がポロポロと流れ落ちていた。もう殆ど消えかかった両手で僕の身体にしがみつくように、痛いほどの力を込めて抱きしめてくれた。

「私だって、一緒にいたいよ……お母様のご飯毎日食べたい……お父様の朝のニヤニヤをずっと見たい……草野球だってやりたいよ……」
「姉ちゃん……」
「せっかく決心したんだよ? “シュウくんたちと一緒なら、もう帰れなくてもいいや”って思えたんだよ? それなのに……それなのに、シュウくんと離れたくないよ!」
「姉ちゃん……帰らないで……帰らないで姉ちゃん!!」
「シュウくん……イヤだ……帰りたくない! 一緒にいたいよシュウくん!!!」

 比叡さんの身体の感触が消えた。比叡さんが僕から離れ、澄んだ眼差しでまっすぐに僕を見た。もう殆ど消えかかっていて表情が分かり辛くなっているが、まっすぐにこちらを見つめる眼差しと、比叡さんの口の動きだけはかろうじてまだ分かる。身体からたちこめる光の粒が少なくなってきた。嫌だ。消えないで。どこにも行かないで姉ちゃん。

「シュ」

 比叡さんの眼差しが消えた。最後のほんの少しの光の粒も消え、僕の名前すら最後まで満足に言うことも出来ず、比叡さんの姿はなくなった。

「姉ちゃん?!! 姉ちゃん!!!」

 いるかもしれない。見えないだけかもしれない。周囲を見回す。姉ちゃんはいない。手を動かし、周囲に姉ちゃんの感触がないか確かめる。でも姉ちゃんの感触はない。

「イヤだ!! 姉ちゃん!!! 姉ちゃん!!! イヤだぁあアアアアアアア!!!」

 精一杯声を振り絞り、どこかにいるはずの姉ちゃんに叫んだ。お願いだから僕のもとに帰ってきて。お願いだから出てきて。一緒に帰ろう。でも姉ちゃんの声はどこからも聞こえない。

「ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」

 返して。姉ちゃんを返して。お願いだから、世界で一番大切な人を返して。お願いします。返して下さい。帰ってきて下さい。帰ってきて下さい。

「ね゛え゛ぢゃぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」

 僕は叫んだ。喉が痛み、枯れ、裂け、口の中に血の味
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