10.姉ちゃんは艦娘
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ウくん……見ててくれた……?」
肩で息をし、体中が痛々しい傷だらけになっている比叡さんが、息も絶え絶えにそうつぶやく。自慢の巫女装束はボロボロになり、比叡さん自身も、体中が傷だらけだ。
「うん……見てたよ……ありがとう姉ちゃん」
僕のそのセリフを聞いて満足したのか……頭と口から血を流し、息も絶え絶えながらも、比叡さんはいつものお日様の笑顔を浮かべた。
「そっか……なら、がんばった甲斐があったよ……」
「うん……うん……」
少しずつ人が増えてきた。消防車や消防船が到着し、燃え盛る貨物船の消火をし始める。僕と比叡さんは、お互いに支えあってなんとか移動して、人だかりの目の届かない、すぐそばの倉庫の影に隠れた。比叡さんは艦娘だ。怪我も心配だけど、見つかったらヤバいことになりそうな気がする……そう思ったゆえの行動だった。
「シュウくん、私の艤装はある?」
そういえば、さっきの戦いの最後で、比叡さんは自分の艤装を外したことを思い出した。
「ちょっと待ってて。取ってくるから」
僕は比叡さんを座らせ、痛い身体を引きずりながらさっきの場所に戻った。さっきぼくたちがいた場所にはまだ人はいなかったものの、消防車のライトや炎上する貨物船の明るさで、かなり見晴らしがよくなっている。
「……? あれ?」
そこで、僕は比叡さんの艤装がなくなっていることに気がついた。確かに比叡さんは艤装を外し、自分の足元に落としたはずだった。その後、僕も比叡さんもその艤装には触ってなかったはずだけど……。あれ? 誰かに持って行かれたのかな?
「シュウくん」
比叡さんの優しい声が聞こえた。コンクールの日の夜、僕を抱きしめて慰めてくれた時のような、柔らかくて温かい声だった。
「姉ちゃん、艤装がなくなっ……て……」
僕は振り返り、比叡さんを見た。比叡さんの身体が淡く光り輝き、星のように綺麗な粒が、比叡さんの身体から、紅茶からたちこめる湯気のように立ち上がっていた。キラキラという音が聞こえてくる気がするほどに、その光景は美しかった。
「シュウくん。……やっぱり艤装、なかったみたいだね」
そう答える比叡さんの表情は、ベランダや神社で見せていた、とても脆い笑顔だった。
「姉ちゃん……何やってるの?」
「んーとね……お姉ちゃん、帰るみたい」
僕は体中が痛いのを我慢して比叡さんの元にかけより、比叡さんの手を握った。ほら、触る事ができるじゃないか。帰るってなんだよ突然。
「あのね……さっきレ級を倒してシュウくんが私を受け止めてくれた時に分かったの。私はきっと、シュウくんを守るためにこっちに来たんだなーって」
いやだ。そんな話聞きたくない。
「で、チラッと私の艤装が見え
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