暁 〜小説投稿サイト〜
姉ちゃんは艦娘
10.姉ちゃんは艦娘
[4/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ちくしょう!! 離せ!! 離せ!!!」

 僕の髪をつかむレ級の右手を必死に振り払おうとしたが、ガッチリ掴まれて振り払えない。手に力も入らない。ヤバイ……このままでは姉ちゃんも僕も殺される……

 レ級の腰から伸びた怪物が、僕の顔のそばで大口を開けた。怪物の息遣いが僕の頬に生暖かい呼気を浴びせ、吐き気を催すほどの臭気とよだれを撒き散らし、僕の顔に近づいてくる。僕は湧き上がる吐き気を我慢しつつ、目をギュッと閉じた。

―シュウくんを離せ……

 比叡さんの静かな声が聞こえ、僕は少しだけ目を開いた。幻だろうか……レ級のすぐ背後で、さっき僕が投げたバットを構える比叡さんの姿が見えた。

「姉ちゃん……」
「私の弟に手を出すなッ!!!」

 幻ではなかった。比叡さんはレ級のすぐ背後でバットを構え、フルスイングでレ級の頭を打ち抜いた。バコンという嫌な音とともにレ級は右に吹き飛び、僕はレ級が反射的に手を離したおかげで、その場に開放され、再度うずくまった。比叡さんが、傷だらけの身体を引きずりながら僕のそばにかけより、抱きしめてくれる。

「シュウくん?! 大丈夫シュウくん?!!」
「ハハ……さすが、テレタビーズのヒーロー……」
「怪我は?! 怪我はない?!」
「体中が痛い……頭ハゲそう……姉ちゃんは?」
「お姉ちゃんは大丈夫……気合! 入れて……!! ……ッ」

 ウソだよそれは……頭や口から血を出して……さっきだってあんなに痛そうな悲鳴あげて……比叡さんは僕を抱きしめるのをやめると、僕の両肩を掴み、まっすぐに僕を見据えた。

「シュウくん動ける?」
「無理……体中いだい……怖い……」

 怖い……これは僕の正直な気持ちだ。比叡さんがいたぶられる様を見て、そして自分自身、死の恐怖に直面して……自分が殺される寸前まで追い詰められ、僕は今、体中の痛みと、それ以上の震えが止まらない。

 比叡さんが、僕の首に手を回した。そしてそのまま僕の顔を自身の顔に引き寄せ、僕のおでこに自分のおでこを重ねた。比叡さんの綺麗な顔が、息が感じられるほどに距離を縮めた。

「大丈夫。お姉ちゃんが必ず守ってあげるから。だからシュウくんはここで、安心して身体を休めて」
「姉ちゃん……」
「大丈夫。お姉ちゃんに任せて」

 ずっと海面をのたうちまわっていたレ級の、悍ましい悲鳴が止んだ。赤黒い血を頭から流しているレ級は、さっきまでの気色悪い笑顔を捨て、こちらをジッと睨む。

 一方、比叡さんもレ級を見据えながら静かに立ち上がった。残り1本になったアームが、ガクガクと痙攣しながら動き、やがてバキンと音が鳴って煙を吹いた。

「艤装はもう使えない……弾薬ももう尽きた……」

 バシュゥッという音が聞こえ、同時に比叡さんのアームが外
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ