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姉ちゃんは艦娘
10.姉ちゃんは艦娘
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張って傷ついているのに、僕はさっきから邪魔しかしてない。自分が情けない。何も出来ない自分の無力さが腹立たしい。大切な人を守れないことが悔しい。

 やがて爆撃が止み、比叡さんが“艦載機”と呼んだ奴らは、レ級の元に戻っていく。比叡さんは一度レ級を睨んだ後、僕に微笑みかけてくれた。額と口から垂れた血が痛々しい。

「……シュウくん、大丈夫?」
「……うん」
「よかった……」

 僕は右手で比叡さんのほっぺたに触れ、口から垂れた血を親指で拭ってあげた。

「……姉ちゃんは?」
「大丈夫……お姉ちゃんは艦娘だから、こんな傷慣れっこだよ!!」

 ほっぺたに触れる僕の手を握り、それをほっぺたから離して、立ち上がる比叡さん。僕の視界に比叡さんの艤装が写った。左下のアームが根本から折れ、元々砲塔が折れ曲がっていた左上のアームは煙を吹いており、無事だったもう一本の砲塔ももう使い物にならないことは見ただけで分かる。比叡さん自身を見ると、肩で息をしているのが分かった。こんなに疲弊している比叡さんは、初めて見た……

 ずっとこちらを見つめていたレ級が、不意に僕達から視線を外し、炎上する貨物船の方を見た。レ級の視線の先にいるのは、貨物船の乗組員が多数乗った救援ボート……

「いけないッ!!!」

 比叡さんの艤装のうち、まだ無事な砲塔が火を吹いた。『ズドン』という轟音が鳴り響き、レ級の周囲に水柱が上がる。比叡さんはそのまま水面に飛び降り、猛スピードでレ級と救援ボートの間に割って入った。その直後、レ級の化け物の口も火を吹き、比叡さんと救援ボートの周囲に水柱が上がった。救援ボートはパニックに陥ったのがここからでも分かる。

「逃げて!! 早く逃げて!!」
「逃げろー!! 離れろ早く!!!」

 レ級の砲撃を一身に受けながら、比叡さんが救援ボートにそう呼びかける。立ち上がった僕も、救援ボートから距離が離れたこの場所で、必死に声を張り上げ、救援ボートに向かって必死にそう叫び、必死に手を振った。

「キャアッ!!!」

 救援ボートの距離がある程度離れた時、比叡さんの足元で爆発が起きた。比叡さんの身体は真上に空高く舞い上がり、そして海面に叩きつけられる。比叡さんの身体はまだ海面で浮いているが、そのままぐったりとうつぶせで倒れ伏してしまった。

「姉ちゃん!!!」
「…………」

 倒れたまま動かない比叡さんに、レ級がゆっくりと近づいていく。レ級はこちらを気持ち悪い笑みを浮かべながらジッとみつめ、比叡さんの元まできた。

「姉ちゃんに何する気だよ……やめろ……やめろぉおッ!!!」

 レ級はこれみよがしに自身の左足を高々と持ち上げると、その足で比叡さんの頭を何度も何度も踏みぬいた。その度にガツンッ…ガツンッ…という鈍く
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