9.姉ちゃんと共に来たもの
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のものじゃないか。
レ級がニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべながら、こちらをジッと見据える。怪物の口をこちらに向け、次の瞬間『ズン…』という音とともに怪物の口が火を吹いた。
「シュウくん!!」
比叡さんが僕をものすごい勢いで押しのけ、僕はバランスを崩して倒れた。仰向けに倒れたから良かったけど、コンクリートのベランダの床に尻をしこたま打った。
直後、港に向かって左手をまっすぐ伸ばす比叡さんから、『ゴウッ』という音と風圧のようなものを感じた。窓ガラスもガタガタッと音をたてて揺れたことから、これはぼくの気のせいではない。それはおそらく、衝撃波と言うものだろう。
「痛ったぁ〜……ッ!」
比叡さんが左手の平を開いた後、左手をブンブンと振る。ゴトッという音と共に、丸くて紫色に濁った、水晶玉のような物体が床に転がった。
「姉ちゃん…これは?」
「レ級の砲弾。防げてよかったぁ……」
比叡さんの足元に転がっている、ヤツの砲弾を持ってみた。
「あづッ?!!!」
触れた途端にジュッという音を立てるほどに砲弾は熱く、とてもじゃないが僕には持ってられない。……そういえば、比叡さんはさっきこれを素手で受け止めてたけど、手は大丈夫だろうか……。
「お姉ちゃんは艦娘だから大丈夫。それよりも……」
比叡さんは港のほうにキッと睨む。恐らく港の方では、あのレ級と呼ばれた怪物が、さっきの凶悪な笑顔を漏らしながら、こちらにいる比叡さんを見据えているのだろう。
「レ級を倒さなきゃ……」
「え……でも……」
比叡さんが突然こんなことを言い出した。ヤバい。いくら比叡さんがスポーツ万能でテレタビーズのヒーローだとしても、あんな化け物に勝てるわけない。死ぬ。このままでは比叡さんはアイツに殺される。
「大丈夫。お姉ちゃんは艦娘だから」
比叡さんはそう言うと、ベランダから出て行った。比叡さんの後を追うと、比叡さんは僕の部屋に入っていく。……僕の部屋には、まだうちに来て間もない頃、僕が比叡さんから預かっていたものがある。
『シュウくん、この艤装と主機をシュウくんの部屋の押入れに入れておいて欲しいんだけど……』
『いいよ。でも必要なときはちゃんと行ってね。勝手に家探しされたら色々とマズいものが……』
『分かった! シュウくんありがとう!!』
『人の話は最後まで聞いてね?!!』
しばらくして、比叡さんが部屋から出てきた。比叡さんは初めて出会った時の巫女装束に身を包み、あのXアームの艤装を身に付け、主機を足に装着していた。ボロボロだった巫女装束が母さんの手によって新品同様に修繕されている以外は、あの、初めて神社で出会った時とまったく同じ格好を、今の比叡さんはしていた。
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