9.姉ちゃんと共に来たもの
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ここまでストレートに言われると、なんだか恥ずかしい……。
「やっぱり、こっちに来てはじめて会ったのがシュウくんみたいな弟で、よかったなぁ……って改めて思ったよ。そしたらね、もう……」
「もう……?」
比叡さんの雰囲気が変わり、さっきまでの笑みが消え、真剣な表情になった。草野球の試合でバッターボックスに立った時のような、場の空気を一変させるほどの、前をまっすぐにキッと見る比叡さん特有の眼差しに、僕の心は射抜かれた。
「シュウくん……お姉ちゃんね」
「うん」
不意に、ズンという重い音が聞こえた。比叡さんにもその音は聞こえたようで、比叡さんはハッとして僕の背後に見える港の方を見た。つられて僕も振り返り、港の方を見た。先ほどから見えていた貨物船から、黒煙が上がっているのが見えた。
「事故かな……110番したほうがいいのかも……」
そう思った僕がスマホをポケットから取り出し、110番しようとしたところを、比叡さんが制止した。
「ちょっと待ってシュウくん。双眼鏡か何かない?」
「へ? なんで?」
悠長に見物するつもりかと思ったのだが、比叡さんの顔を見ると、テレタビーズの試合でバッターボックスに立っている時以上の真剣な表情をしている。有無を言わさない比叡さんの表情に呑まれ、僕は110番をするのをやめた。
「姉ちゃんちょっと待ってて」
スマホのカメラを起動し、それを港に向ける。幸いなことに港の方は貨物船の明かりで照らされていて結構な明るさになっている。僕のスマホのカメラでどこまで望遠出来るか分からないけど、出来るだけ画面を拡大し、比叡さんと画面を覗きこんだ。
意外なほど望遠が効いたおかげで、貨物船の様子が少しは把握出来た。貨物船では小さな火災が発生しているらしく、所々から火が上がっている。
「シュウくん! さっきの所もう一回見せて!!」
僕は少しスマホの角度を戻した。
「あの時のレ級……」
比叡さんがそう呟いた。そこに写っていたのは紛れもなく、海面に立つ一人の少女だった。その少女の腰辺りから怪物としか形容出来ないものが生えていて、その怪物のようなものが口から火を吹く度、『ズン……』という音が聞こえ、貨物船から新たな火柱が上がっているようだ。
レ級がこちらを向いた。目一杯望遠と画像拡大をしたためにスマホの画面は非常に荒くなっているが、あの少女の怪物がこちらを見てニヤリとしたのが分かった。秦野に冷たいペットボトルを首に押し付けられた時以上の不快な悪寒が、僕の背筋を駆け巡った
―そのレ級がいないんだよ。ほら、相手5隻しかいないだろ?
そうだ思い出した。岸田がこんなことを言っていた。今、港で暴れているあの怪物は、岸田が見せてくれた『レ級』のイラストそ
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