第一部
第六章 〜交州牧篇〜
八十六 〜夜戦〜
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賊将が私に飛びかかってきた。
「土方、覚悟!」
「む!」
なかなか、鋭い刃風だ。
まともに受ければ、兼定とてわからぬ。
「貴様、名は?」
「…………」
「黙りか。ならば、その身体に聞くとしよう」
「死ね!」
突きは躱し、払いは受け流す。
「くそ、ちょこまかちょこまかと!」
「これが私の戦い方だ」
正面から打ち合うばかりが戦いではない。
道場剣法では、実戦で何の役にも立たぬ。
次第に、賊将の息が上がってきた。
「ぜい、ぜい……。しぶとい奴め!」
「もう終わりか? 戦っているのは貴様だけのようだが」
「な、何っ?」
偽りではなく、残った賊は皆、武器を捨てていた。
「おのれ……おのれっ!」
逆上し、力任せに剣を遣う賊将。
捕らえるのは容易いが、生かしておく価値もないと見た。
そう決めると、私はしゃがんで剣を躱し、そのまま足払いをかけた。
「うおっ!」
倒れたところに、兼定を突き立てる。
「ぐぼっ! ひ、卑怯者め……」
「庶人を徒に苦しめ、また私を夜討ちで襲う者もまた卑怯者ではないか」
賊将は苦悶と憎悪の表情を浮かべたまま、倒れ伏した。
「歳三様、お怪我はありませんか?」
「うむ、大事ない」
兼定に血振りをくれ、鞘に収めた。
「申し上げます! 輜重隊を襲った賊軍は、見事黄忠様が撃退。賊軍は降伏したとの事です」
紫苑ならば当然であろうが、これで第一の目的は達したと言えよう。
「皆、勝ち鬨を上げよ!」
「応!」
我が軍の士気は、いやが上にも高まっていた。
……しかし、何故賊将は私を狙ったのだ?
捕虜を尋問するより他にあるまいが、またしても見えない大きな力なのであろうか。
まだまだ、平穏無事な日々を手にするまでには至りそうにもないな。
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