第一部
第六章 〜交州牧篇〜
八十六 〜夜戦〜
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い、それは間違いなかろう。
だが、ただ迎撃するだけで良いのか。
「歳三様。策なら既に立ててあります」
「ほう。顔に出ていたか?」
「いえいえ、以心伝心って奴ですよー。稟ちゃんも風も、お兄さんの事は把握しているつもりなのですよ」
隠し立てするつもりはないが、見抜かれていたか。
ならば、我が軍師のお手並み拝見だな。
そして、一刻程が過ぎた。
既に賊軍は、指呼の距離まで近づいているとの事。
「歳三様、全員配置につきました」
「いよいよですねー」
「うむ。……二人とも、本当に良いのか?」
彩は一隊を率いて別の場所に向かっているが、稟と風は私の傍に残っていた。
仮に陽動であっても、危険な事に変わりはないのだが。
「愚問ですね。私は歳三様の筆頭軍師ですよ?」
「筆頭が稟ちゃんというのはともかく、風もお兄さんとは一蓮托生ですよー」
二人とも、何の迷いもなく言い切った。
「大丈夫なのだ。お兄ちゃんも二人も、鈴々が守ってやるのだ」
そして、相変わらずの鈴々。
本陣に残っているのは、他には僅かばかりの兵のみ。
だが、篝火は灯したままであり、不寝番の兵も残してある。
賊の動きを見る限り、此方の様子はある程度知られていると考えるべきであろう。
それを踏まえた上で、彩や星らも動いていた。
……どうやら、来たな。
「お兄ちゃん」
「鈴々も感じるか?」
鈴々は頷くと、蛇矛を握り締めた。
その直後、カラカラと微かな木の音が、あちこちで鳴り始めた。
「便利ですね、この鳴子という物は」
「綱に板をぶら下げて張り巡らせるだけですが、不意を打たれる事はなくなりますからねー」
「そうだ。それに、敵の侵入した方角も知る事が出来る」
「それに、急に音が鳴れば誰でもびっくりするのだ」
実際、鳴子のなった場所あたりが、俄に騒がしくなった。
「よし、かかれ」
「応っ!」
兵らが、篝火に水をかけていく。
忽ち、あたりは闇に包まれる。
「しまった、待ち伏せだ!」
「ひ、退けっ!」
一矢も放つことなく、賊は逃げ始めたようだ。
だが、もう手遅れだ。
「今だ、全員かかれっ!」
彩の声と共に、馬蹄の音が大地を揺らす。
全軍の騎兵は全て、彩に預けてある。
疾風の調査で、賊軍には殆ど騎兵がいない事が判明していた。
我が軍で一番騎兵を使いこなす彩とでは、そもそも比較する事自体烏滸がましいであろうが。
「挟まれたぞ!」
「ええい、敵陣との間を突破しろ!」
向きを変えた賊軍だが、其方にも抜かりはない。
草地から一斉に槍が突き出され、バタバタと賊が倒れていく。
「逃げられると思うな。此所はこの趙子龍が通さん!」
星は槍兵を率いて、地に伏せていた。
自身が槍の遣い手だけあ
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