第一部
第六章 〜交州牧篇〜
八十六 〜夜戦〜
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二郡の兵も動かさねばなるまい。連絡は取れるか?」
「お任せ下さい」
「うむ。稟、具体的な作戦を練っておけ。風は長沙郡と桂陽郡の現状を調べておくように」
「御意」
「御意ですよー」
「鈴々と星は、愛紗と紫苑に方針を伝えよ。書簡にて認めておく」
「了解なのだ!」
「ははっ!」
「彩は引き続き、周囲の警戒を怠るな。不意打ちがないとも限らぬ」
「はっ!」
睡蓮の軍が長沙郡に到着すれば、状況は変わる。
だが、それを待ってはおられぬ以上、全てを迅速に運ばねば。
その夜。
「殿。斥候に出した兵が、不審な一団を見かけたとの報告を持ち帰りました」
彩の知らせに、私は床几から腰を上げた。
「賊軍か?」
「恐らくは。旗などは特に掲げていないようです」
「ふむ。どこに向かっているかはわかるか?」
「今、疾風の手の者が追っています。ただ、もし狙いがあるとすれば輜重隊か、此所でしょう」
前者であれば、目的は言うまでもない。
後者だとすれば、少々厄介な話となろう。
「彩はどう見る?」
「殿のお命を狙う、確かに策としてはあり得ますが……。可能性から見れば、それよりも食糧かと」
「私もそう見ている。紫苑には知らせたか?」
「はい。既に使いの兵を向かわせています」
尤も、紫苑ならば不意を打たれる事はあるまいが。
「申し上げます!」
と、天幕の外から声がした。
「何事か!」
「はっ! 賊軍の動きが判明しました。二手に分かれ、輜重隊と本陣に夜襲をかけようと動いています!」
「確かか!」
「は、はっ!」
彩の気迫に、一瞬たじろぐ兵。
「殿!」
「……お前は下がって良い。新たな報告があればまた知らせよ」
「応っ!」
一礼して、兵は天幕を出て行った。
敵は総勢ならば我らの数倍との事だが、これだけ規模が拡大した中、素早く動けるのはその一部であろう。
「彩。兵はすぐに動かせるか?」
「はい!」
「ならば、直ちに移動の準備を。それから、稟と風を呼んでくれ」
「その必要はありませんよ、歳三様」
「そろそろ動きがある頃だろう、って稟ちゃんと話していたのですよ」
流石と言うべきか、絶妙の頃合で二人が入ってきた。
「ならば訊ねる。この動き、どう見る?」
「はい。狙いは輜重隊でしょう」
「理由は、奴らの食糧難か?」
「そうです。もし歳三様を狙っての事だとしたら、あまりにも無謀な賭としか言えませんから」
「お兄さんを確実に討ち取れるのならわかりますけど、それは無理ですしねー」
「当然だ。殿は賊如きに指一本たりとも触れさせん」
「敵も、それぐらいは承知でしょう。ですから、此所を狙う方は陽動、本命は輜重隊と見て間違いありません」
「風も同感ですよー」
「決まりだな。殿、お下知を」
賊の狙
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