8.姉ちゃんの正体
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れられるほどに距離が近い。
「何かありましたか? 悩み事ですか?」
その直後、僕達のそばの街灯に明かりが灯り、秦野の顔がぼんやりと照らされた。いつになく真剣な面持ちで、僕の目をまっすぐに見つめていた。
「……なんで?」
「去年の今頃、先輩パートリーダー任されて、悩んでましたよね」
誰にも言ってなかったのに、お前よく知ってるね……確かにパートリーダーに抜擢されたけど、自分の腕がパートリーダーって重責と釣り合ってない気がして、けっこう悩んだんだったなぁ……
「ずっと隣にいましたから。……で、今の先輩、その時と同じ顔してます」
「そっか……」
そういや秦野が入学して吹奏楽部に入部してから、合奏の時はずっと僕の隣の席は秦野だったもんなぁ。ずっと隣にいりゃ、そら分かるか……
「……なぁ秦野?」
「はい」
「もし僕が、秦野自身も知らない、秦野の秘密を知ってるって言ったら……聞きたい?」
「聞きたいです」
「たとえそれが、秦野にとってショックすぎることでも?」
「はい」
うーん……秦野ならそう言う気はしてたけど、即答するとは思わなかったなぁ……
「自分が傷つくことになったとしても?」
「先輩の話なら」
少しだけ強い風が吹き、秦野のポニーテールが揺れた。なんだかすごく恥ずかしいことを言われた気がしたが、僕の目をまっすぐ真剣に見つめる秦野を前にして、照れる気にならなかった。
「私は先輩のことを誰よりも信頼してます。だから先輩には、それがどれだけ辛い内容だとしても、話して欲しいと思います。それが先輩の言葉なら、私は受け止めます」
―シュウくんみたいな頼りがいのある弟に、最初に出会えてよかった
「……そっか」
僕は、自分の家に続く道に目をやった。道はしばらくまっすぐで、点々と街灯がついている。すべての街灯に灯が灯っているのが、この場所からも分かった。
同じタイミングで、秦野がややうつむいた。相変わらず風が秦野のポニーテールを揺らしていた。秦野に目線を移したが、彼女が俯いているせいで、僕からは彼女の表情が見えない。
「先輩、しゃがんで下さい」
秦野がうつむいたままこう言った。秦野がうつむいているせいで表情が見えず、その言葉に少しだけイライラが篭っているように感じた。
「? なんで?」
「いいからさっさとしゃがんで下さい」
僕は疑問を感じながらも秦野の意味不明な命令に従い、腰を落としてしゃがんだのだが、その途端、秦野は僕の頭をくしゃくしゃっと撫でた。不思議とその撫で方は、比叡さんの、優しくてちょっとガサツな撫で方と同じたった。
「秦野?」
しゃがんだまま秦野を見上げると、秦野はこっちを見て微笑んでいた。街灯の逆光になってい
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