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姉ちゃんは艦娘
8.姉ちゃんの正体
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げながら、岸田の家で見た一部始終を僕は思い出していた。あのチープな戦闘アニメーション、中破して傷だらけの榛名、それを知っていて、なお進軍の指示を出す岸田……岸田が悪くないのは分かっている。あいつはあいつなりに、自分のキャラを失ってしまわないよう細心の注意を払ってプレイしていることを僕は知っている。あれはゲームだ。それは分かっている。だがそれでも、もし本当に比叡さんがあの世界から来たのだとすれば、釈然としない部分はある。

 僕は命がけの戦いをしたことはない。死の危険を感じたこともない。でも、どう思うだろう? 戦場で命がけの戦いをしている人が『これはゲームです。あなたの命がけの行動は、誰かがゲームとしてあなたを操作している結果なんです』と言われたら、その人はどう感じるのだろう? 比叡さんに今日の話をするということは、きっとこういうことだ。

 ……そして白状する。いつの頃からか、僕は比叡さんに帰って欲しくないと思っていた。この数カ月、比叡さんに振り回され、世話を焼き、困らせられ、そして励まされながら生活してきた。比叡さんと共に生活する中で、僕にとって、いつしか比叡さんは本当の姉のような存在になっていた。

 話をすれば、必ず僕を笑わせてくれた。僕が落ち込んでいたら、全力で包み込んで励ましてくれた。ご飯は必ず人の何倍も食べた。お風呂あがりには隙だらけの格好で僕を挑発し、家に帰ればお日様のような笑顔で出迎えてくれた。

―私! がんばるから!! 見ててねシュウくん!!!

 そんな比叡さんと、僕は離れたくなかった。きっとそれも、僕が話をためらう理由の一つだった。僕は比叡さんと、ずっと一緒に暮らしたかったんだ。いつまでも一緒にいたかったんだ。あの人の横で、お日様のような笑顔をいつまでも見ていたかったんだ。今日のことを話してしまえば、比叡さんは僕の前から消えてしまうんじゃないか……そんな不安でいっぱいなのだ。

「……先輩がいる」

 聞き覚えのある声が背後から聞こえ、僕はゆっくりと背後を振り返った。学校帰りと思しき、制服姿の秦野がいた。

「……なにやってんの? 今日は部活は休んだの?」
「こっちのセリフですよ。3年生はとっくに帰ってる時間でしょ。もう部活終わってますよ」

 秦野が怪訝な顔をしてそう言う。ぼくは胸ポケットからスマホを取り出して時刻を見た。岸田の家を出て1時間以上経ってたのか……ここから岸田の家まではゆっくり歩いて20分ぐらいだから、30分以上ここでこうしてたんだな……。

「……もうこんな時間だったのか……」
「早く帰って受験勉強しなくていいんですか?」
「お前、厳しいね……」
「キャラメルくれるまでは厳しくいく所存です」

 秦野がこっちに来て、僕の目の前に立った。手を前に出せば、伸ばさずとも触
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