暁 〜小説投稿サイト〜
姉ちゃんは艦娘
8.姉ちゃんの正体
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 戦いが始まった途端、岸田がそう口走った。

「どうしたの?」
「いや、さっきここのマスにレ級がいるって教えたろ?」
「うん」
「そのレ級がいないんだよ。ほら、相手5隻しかいないだろ?」

 確かに、今相手は5人しかいない。

「本来だったら深海棲艦側の一番上に、真っ赤になったレ級エリートってやつがいるんだけど……」

 岸田がブラウザを起動し、どこかのサイトにアクセスした、数秒のラグの後、ブラウザに表示されたのは艦これの攻略サイト。岸田が手際よくリンクをたどり、今戦っているステージの攻略ページを表示させた。

「ほら、ここに“レ級エリート”って書いてあるだろ?」

 岸田が画面を指差す。そこには、このステージの各マスの敵チームの編成が記録されている。今戦っているマスの敵編成は……構成は何種類かあるようだけど、確かにすべての編成に“レ級エリート”が入っている。

 続いて岸田は、同じくブラウザで検索をかけ、レ級の画像を表示させた。頭からフードをかぶり、笑顔で敬礼する女の子の画像がレ級のようだ。その笑顔は、お日様のような比叡さんの笑顔とは異質な、裏に狂気をはらんだ凶悪な笑みに見えた。

「ほら、こいつがレ級だよ……つーかバグか? シッカリしろよ運営!! まぁ攻略は楽でいいけど……」

 岸田がそう毒づきながら、画面を艦これに切り替えた。どうやらプレイしている人にとって、このマスにレ級という敵が出てこないことはけっこうな珍事らしい……。しかし普段このゲームをやらない僕にとって、レ級がいないことなどどうでもよかった。もし比叡さんが、本当に岸田がプレイしている艦これの世界から来たのだとしたら、比叡さんの必死の戦いがあんな風に扱われていたことが、僕にはただただ悲しかった。

 岸田の家を後にして家路につく。足取りが重い。比叡さんに『分かったことは必ず話す』と約束したが、それでもこんなことを話していいものなのか……こんな現実離れして馬鹿げた話……僕は話す決心が持てず、まさに両足を引きずるかのように、のっそりのっそりと歩いた。家に帰りたくなかった。

 気が付くと、初めて比叡さんと出会った神社の前まで来ていた。岸田の家と僕の家の間の、ちょうど真ん中の位置にこの神社はある。まったく決心が出来ないまま、家路の半分に到達してしまったのか。

―たまにね。来たくなるんだ。ココに来たら、色々分かる気がするから

 そんな比叡さんの一言を思い出し、重い両足を引きずりながら神社に入った。あの日、比叡さんが立っていた位置に僕も立ち、比叡さんの様に上を見上げる。季節がもう秋のためか、まだ6時前なのにすでに空は薄暗い。夕方特有の赤みがかった空の部分はまだ残っているが、それでも空の大部分は、もう黒く染まっていた。

 空を見上
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