第一部
第六章 〜交州牧篇〜
八十五 〜再始動〜
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だ。それに、賊共の侵入もあり得る。警戒を強めよ」
「はっ!」
思わぬ方向に、事態が動いたようだ。
ともあれ、趙範を確保せねばなるまい。
「お兄さん、これは好機かも知れませんねー」
「求めていた切欠、それに大義名分か」
「はいー。劉表さんがいくら救援を拒んでも、趙範さんがお兄さんに依頼したとなれば何の問題もなくなります」
「……それは、趙範如何ではあるな」
「後は、庶人の皆さんを追ってきた賊さん達を追い払うという事であれば、軍を動かす名分としては十分かとー」
「うむ……。風、彩や愛紗らにも、この事を伝えよ」
「御意ですよー」
趙範が、私の知るような人物であるかどうか。
願わくば、違っていて欲しいものだが。
「いやいや、お助けいただきまして誠にありがとうございます」
数刻後。
星に連れられて来た趙範一行は、文字通り命からがら、と言った風情であった。
風采の上がらぬ男ではあるが、それでも郡太守であった者。
全くの無能ではあるまい。
「私が土方だ」
「ご高名は何度も耳にしておりますぞ。お目にかかれて光栄ですな」
そう言って、趙範は星に眼を向け、
「それに、真っ先に駆けつけていただいたのが、かの趙雲将軍とは。私も、常山の出身でしてな」
「ほう。同郷でござったか」
「はい。ご存じないやも知れませんが、実は貴女とは遠縁に当たるのです」
星は、首を傾げる。
「……申し訳ござらぬ。私には覚えがござらん」
「無理もないでしょうな。家系図でもあれば宜しいのですが、御覧の通りでしてな」
「趙範殿。そのような話は後にしていただきたい」
「おお、然様でしたな。土方様、賊の手から、我が桂陽を取り戻していただけませんか?」
そう言って、趙範は頭を下げた。
「だが、それは荊州牧である劉表殿の職務ではないか?」
「仰せの通りです。ですが、劉表様は未だ、長沙郡すら奪還できていないようですな。これでは、いつ桂陽にまで来て頂けるか」
「それで我らが軍を動かせば、劉表殿の誹りを受ける事になる」
「お言葉ですが、土方様。州牧は確かに、我ら郡太守に対する監察役ではありますが、絶対的にその命に従うという決まりはありませんぞ」
「……うむ」
「そもそも、劉表様がしっかりと軍備を固めていれば、今回のような事は起こらなかったのです。現に、土方様の交州は平穏そのものではありませんか」
「我らとて、全てが順風満帆であった訳ではない。士一族の反乱があった事、承知であろう?」
趙範は首肯する。
「ですが、それも見事に乗り越えられた。それがどうです、荊州の有様は」
「劉表殿は元々文官の出、得手不得手があるのは仕方ないと思うが」
「限度という物がありますぞ。……名分が必要とあらば、私がそれを朝廷に奏上致しましょうぞ」
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