第一部
第六章 〜交州牧篇〜
八十五 〜再始動〜
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いところだが、今の私には何の権限もない。
もし賊が交州に侵入でもしてくれば別だが、今のところその気配はない。
「歳三殿。新たな報告が」
そこに、疾風と明命が飛び込んできた。
今は少しでも情報が欲しい。
睡蓮もその認識でいる以上、この二人が協力するのが最善であろう。
そして、それは見込み通り多大な成果を上げている。
「桂陽郡が、賊の手に落ちた模様です」
「では、趙範様は?」
「まだ、そこまでは」
頭を振る二人。
趙範……確か、桂陽郡太守であったと記憶している。
ただ、時系列的にもっと後の筈だが。
この世界では、それを問うのも詮無き事のようだ。
「歳三様、私に行かせて下さい」
「紫苑。落ち着け」
「いいえ。劉表様は仕えるに値しない、と見限りはしましたが……。このまま、荊州の庶人が蹂躙されるのを看過は出来ません」
「気持ちはわかりますが、それでは歳三殿が罰せられてしまいます」
「疾風ちゃん、でも……」
「黄忠。俺も徐晃に賛成だ、早まっても無駄だぜ?」
睡蓮が、大声で言いながら入ってきた。
飛燕も、頭を下げつつ従っている。
「明命が戻ったって聞いたんでな。いきなり入って悪かったが」
「いや、どのみちお前も呼ぶつもりであった。構わぬ」
「ああ、その方がこちらも助かるってもんだ。とりあえず、俺達は廬陵郡に向かうぜ」
「廬陵郡? 会稽郡ではないのか?」
「そんな無駄を俺がすると思うかい? もう、祭に廬陵へ移動するように伝えてある」
「ほう。何時の間にか手を打っていたか」
「まあな。さて、俺も向かうとするか」
風の申した睡蓮の、今一つの狙い。
勘頼りではあるが、このような事態を見越していたからこそ、単身同然で現れたのであろう。
急報を受けてから動いたのでは、準備に時間がかかり過ぎる。
それに、睡蓮の性格上、自ら兵を率いてくるであろう事は容易に予想できる。
だが、如何に股肱の臣とは申せ、指揮する者が違うと言う知らせを受ければ、敵にも何らかの変化が生じる筈だ。
少なくとも、睡蓮に取っては悪いようにはなるまい。
そして、敵の目前で旗を掲げれば、どうなるか。
……何とも、恐ろしい奴だ。
「歳三」
「うむ」
「また、お前と一緒に戦える日が来て嬉しいぜ。じゃ、また後でな」
近所にでも出かけるかの如く、何気なく睡蓮は去って行く。
「熟々、敵には回したくない御方ですね」
「全くね。ふふ、歳三様だけじゃなく、睡蓮様にまで諫められるとは。私もまだまだね」
紫苑から、焦りの色が消えたようだ。
だが、沈着冷静に見える奴も我を忘れる事がある、それは再度戒めとせねばなるまい。
「歳三殿。私も、任務に戻ります」
「頼むぞ。お前の情報如何で、我らの命運は決すると言っても過
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