第一章
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トガ
ジュリアス=ステネッリは大学の演劇部に所属しているがこの度ユリウス=カエサルを中心とした歴史劇の脚本と演出を担当することになった。ここで衣装について悩むことになった。
長い睫毛にはっきりとした黒い目、それに癖のあるブロンドの髪を持ち顎は割れている。逞しい長身は演劇部よりもレスリング部にいる様だ。
その彼が今演劇部の部室の机に座って腕を組んでいた、その彼に同じ演劇部であり友人でもあるフランコ=ミレアーノが声をかけた。
「今度の舞台のことかい」
「うん、そうだよ」
その通りとだ、ジュリアスは黒髪に黒い目の友人に応えた。
「ローマが舞台だけれど」
「古代のね」
「シナリオは出来たんだ」
そちらはというのだ。
「もう脚本は書いたい」
「早いね」
「カエサルのことは知っているからね」
主役である彼のことはというのだ。
「周りの人物のことも」
「スッラもアントニウスも」
「オクタヴィアヌスもポンペイウスもだよ」
カエサルの周りにいた者達のこともというのだ。
「全て知ってるからね」
「もうそっちは書けたんだね」
「チェックを頼むよ」
そちらのというのだ。
「是非ね」
「それじゃあね」
「ただね」
「君が今悩んでいることについてだね」
「そうだよ」
まさにそうだとだ、ジュリアスは答えた。
「問題は演出だよ」
「ローマが舞台だね」
「君も知っている通りにね」
「じゃあ演出の方が楽じゃないかい?」
フランコはローマが舞台であることからジュリアスに言った。
「それなら」
「いやいや、ローマだからだよ」
「ローマ時代だからかい?」
「かえって難しいんだよ」
こう言うのだった。
「むしろね」
「どうしてだい?」
フランコはジュリアスの言葉に首を傾げさせて問うた。
「ローマなら服もはっきり知ってるじゃないか」
「僕がだね」
「そう、トガとかね」
「それで悩んでいると言ったら?」
ジュリアスはフランコに言葉を返した。
「どうするんだい?」
「服のことを知っているからかい?」
「当時のね」
「じゃあトガなり鎧なりをだよ」
フランコはジュリアスの言葉を聞いて彼に何を言っているんだという顔で問い返した。言葉にもそれが出ていた。
「ローマのものにしたらいいじゃないか」
「そのつもりだよ」
「じゃあ悩みことはないじゃないか」
フランコは余計に首を傾げさせて問うた。
「もうそれでいけばいいじゃないか」
「じゃあ聞くけれど当時の服の色は何色かな」
「色?」
「そう、色だよ」
こう言うのだった。
「何色かな、トガは」
「決まってるじゃないか、白だよ」
すぐにだ、フランコは答えた。
「トガはね」
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