5.姉ちゃんは年上
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かあさんがそう僕に耳打ちしてくれる。そっか。なら大丈夫だ。……つーか母さん、比叡さんの気合があの凶悪なクリーチャー料理を生み出すのを知っていたなら、ちゃんとブレーキをかけてくれ……。
「味わって食えよ〜。あんな楽しそうな比叡ちゃん見たの初めてだったぞ……ありゃ。また小田浦で漁船の座礁か。最近多いな〜……」
父さんが新聞に目をやりつつコーヒーを飲みながらそう言ってくる。へぇ〜そうなのか。ちなみに“小田浦”ってのはうちの近所にある港、小田浦港だ。
ともあれ、これで準備は万端。今日は金賞に向けて頑張るのみだ。
「父さんたちはコンクール見に来るの?」
「そだな。お前の中学最後のコンクールだし、お前がどんな音を出すようになったのか聞いてみたい」
「母さんもそのために仕事休んじゃったわ」
「私も酒屋のアルバイト休んじゃいました!!」
そうそう。最近比叡さんは酒屋さんのアルバイトを始めたらしい。重い荷物を運ぶことが多い酒屋さんだけに、有り余るパワーを誇る比叡さんはけっこう重宝されているそうだ。
「わかった。……じゃあ行ってくる」
「おう。悔いの無いよう、頑張ってな」
「行ってらっしゃい」
「シュウくん! 気合だよ!!」
父さんは激励するでもなく、でもいつもの言葉で励ましてくれた。母さんはいつもと変わらない調子で、僕をフラットな気持ちで送り出してくれた。そして比叡さんはいつもの、見ているだけで気持ちが元気になる、お日様のような笑顔で僕を見送ってくれた。僕の家族は全員、僕の味方だ。怖いものは何もない。僕は意気揚々と学校に向かった。
今日一日の流れをザッと説明すると、まず学校についたらトラックへ楽器の搬入を行う。それが済んだら、バスに乗って会場に移動。会場は隣の市にある文化会館だ。文化会館についたら、まずは各々昼食。その後到着しているはずの楽器を搬出して、割り当てられたリハ室で最後のリハ。そして出演。こんな感じだ。僕たちは滞りなくトラックに楽器を搬出してそれを見送った後、バスに乗って会場に向かった。
バスの中は悲喜こもごも。『ヤバいよ……緊張してきた……』と口走る女子部員がいれば、『あそこの中学の演奏、聞いてみたいんだよね……』と意識の高い後輩もいる。中には『○○中の女子、カワイイらしくてさ……』と緊張の欠片も見せない剛の者もいる。
「そういや、この前のえらくキレイな人、先輩の知り合いなんですか?」
僕の隣の席に座った秦野に、不意にこう聞かれた。
「へ? この前の人って?」
「ほら、草野球大会の時に先輩に声かけてた……」
「ぁあ〜、比叡さんか」
「ヒエイさん?」
「そうそう。親戚の人でさ。最近うちに居候してるの。姉みたいなもんかな?」
「ふ〜ん……」
まさかここで正直に『
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