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富士山
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第一章

                      富士山
 この大学の登山部の恒例行事でだ。それがあった。
 そのことについてだ。登山部の一年達は口々に言った。
「予想していたけれどな」
「ああ、そうだな」
「それでもなあ」
「あの山を登るんだな」
「富士山をな」
 その恒例行事は富士山だ。そこに登るというのだ。
 だが、だ。その一回生達にだ。先輩である松本耕一、大柄でプロレスラーの様な体格の、それでいて顔付きの優しい彼がだ。話したのである。
「いや、これ位は普通だからな」
「登山部の活動ではですか」
「普通なんですか」
「そうだよ、むしろましな方だよ」
 そうだというjのだ。
「富士山位はね」
「じゃあ他の山はですか」
「もっと凄いんですか」
「冬の日本アルプスの山なんかは」
 どうかとだ。松本は具体的な例を出した。
「それこそ命懸けだからね」
「ああ、冬の登山はですね」
「やっぱり凄いんですね」
「富士山は確かに登るのには辛いよ」
 このことは否定しなかった。松本もだ。
 だがそれと共にだ。彼はこうもだ。一回生達に言った。
「けれど命の危険はないからね」
「だからましなんですか」
「そういうことなんですね」
「そう、登山はハードなスポーツだよ」
 松本の声が今度は厳しさを含めてきた。
「命を賭けたね」
「わかりました。じゃあ富士山の登山ですけれど」
「気合入れてやらせてもらいます」
「まずは」
「そう、どんな山でも登るからには絶対に気を抜かない」
 このことをだ。また言う彼だった。
「何があってもね」
 こう言ってだ。そうしてだった。
 登山部の面々、一回生も含めてだ。彼等は富士山に登ることになった。そしてだった。
 まずは富士山の麓に来た。そこからだ。
 富士山を見上げるとだ。これがだった。
「高いですね」
「高いとは思ってましたけれど」
「実際はこんなに高かったんですね」
 その富士山を見上げてだ。一回生達は口々に言うのだった。
「それでこの山を登るんですね」
「今からそうするんですね」
「そうだよ。今からだよ」
 実際にそうするとだ。松本は彼等に言う。誰もが登山の姿をしている。
 その登山の姿でだ。念入りに準備体操をしながらだ。彼は一回生達に言った。
「絶対にやらないといけないことはね」
「はい、準備体操ですね」
「先輩が今している」
「そう、登山はスポーツだから」
 スポーツならばだ。ならばこそだというのだ。
「こうして念入りにね。事前に身体はほぐしておくんだよ」
「わかりました。そういうことですね」
「まずは」
「身体を痛めたら何もならないよ」
 まさにスポーツそのものの話だった。
「だからね」
「よし、それじゃ
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