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伝説のトレーナーと才色兼備のジムリーダーが行く全国周遊譚
第十二話(下) 長い想いは結ばれて
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はまぐれだと思ってて本当に勝てたとは思わなかったくらいですから。でも……この前の戦争でエリカさんを命張って守っている姿を見て……あたし……」

 ミカンはそれ以来黙してしまった。

「そ……そんな。ダメだよ。俺にはエリカがいるんだから」
「分かっています。でも、この気持ちどうしても抑えられなくて……。あれ以来仕事もまともに手がつかないんです」
「そ……そこまで俺の事を……」

 レッドからしたらそのことは予想外のことである。

「ですから……叶わない想いならばせめて思い出に……」

 ミカンはレッドにそっと抱き着いて、踵を上げ、すかさずキスをした。
 エリカと比べれば素朴な味わいだったが、そこがまたそそるものがある。

「ミカンさん……」
「えへへ……ファーストキス……あげちゃいました。ありがとう。これで……区切りができました」

 そういうとミカンはレッドに背を向ける。

「ごめんなさい……俺、エリカを裏切れないから……ミカンさんの気持ちには応えられなくて」
「いいんです……。これで全て……おしまい。エリカさんには、宜しく伝えておいてください。あと、全国制覇への旅……頑張ってくださいね」

 最後は涙声になりながらミカンはその場を走り去って行った。
 ミカンが去った場所には三つほど丸く湿った跡が残っている。そして、物陰には一つの影があった。

―午後1時45分 同所 埠頭―

 二人は乗船時刻が来たため、船に向かっていた。

「さてと、いよいよか……気張っていこう」
「ええ……左様ですわね」

 エリカは少し元気がなさそうだった。

「ん? どうした?」
「何でもありませんわ。行きましょう」

 それと同時に少し不機嫌な様子である。要領を得ないまま二人はカイナシティ行きの船に乗ったのだ。
 
 こうして、ジョウトを離れ、夫婦の活躍は南国の島へと舞台を移すのである――

―第十二話(下) 長い想いは結ばれて 終―


 
 

 
 
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