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伝説のトレーナーと才色兼備のジムリーダーが行く全国周遊譚
第十二話(中) 王国の終焉
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。手に入れるまでの過程は少しでも難しいほうが、事後のワシの征服感も上がるというもの……。ここはひとつ取引といこうじゃないか」
「は?」
「今ここでエリカ君をワシに引き渡すならば、ここは発砲しないでおいてやろう。レッド君はロケット団を潰すなり逃げるなり好きにするが良い。じゃが、そのままならばエリカ君を背負ったまま撃つ」
「ま……待ってくれ。それじゃあエリカまで危害が……」

 丁度現在はレッドの首の後ろにエリカの口がある。もしこのまま撃って貫通でもすればほぼ間違いなくエリカも即死、良くても脳に障害が残ることは確実である。

「そうじゃのう……これは市販されている中でも最大の50口径のマグナムじゃ。危害どころかエリカ君ごと死ぬのは確実じゃの」

 オーキドは平然とそれを言ってのけたのち、にやりと笑い

「じゃが、それもまた一興よ。動かない屍になったエリカ君と褥を共にするもまた良い。エンバーミング(防腐処理)を施しつつ蝋人形と化したエリカ君と夫婦生活を送るのも悪くはないの」

 それを聞いてレッドは得も言われぬ恐怖を覚えた。エリカの方は何か返そうとはしていたみたいだがあまりのことに声帯が麻痺してしまったのか声が出ない様子である。

「さあ、どうするのかねレッド君。30秒だけ時をくれてやろう」

 オーキドはその言葉と同時に安全装置を外し、グリップを強く握りしめる。あとはトリガーを引くのみだ。
 レッドは全神経を集中させてどうするかを考える。
 たった30秒。30秒で自らの命運が決まってしまう。
 オーキドの目は本気そのもので、時間が経てば容赦なく発砲するだろう。
 戦場は相変わらずとても騒がしく、街に広がる炎で春なのに夏同様の熱気となっていたが、この周辺だけは氷河の如く冷厳な雰囲気であった。
 25秒ほど経ったところでレッドが口を開く。

「分かった……エリカを……渡す。俺はまだ死にたくない」

 オーキドはそれを聞いて恐らく今まで彼が見た中で一番の笑顔をレッドに見せる。
 一方、エリカの目からは光が失われる。

「よう決心したの。さて、渡してもらおうか」
「待ってください。その前にこの物騒なものを下げていただけないですか」
「それは出来ん。約束が完全に履行されるまでは油断できぬからの」

 オーキドはやはり海千山千である。一筋縄ではいかない。

「片手ではエリカを抱きかかえられないでしょう。彼女は今足を怪我しているのですよ? まさかあれほどまで求めていたエリカを一旦でもこの地べたに置けとでも?」
「う……うぅむ。分かった」

 そう言ってオーキドは渋々拳銃を下げる。
 レッドはうつむきながら数秒黙したのち

「では……」

 と言いながらエリカの手をほどこうとする。
 しかし
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