第三章
[8]前話
「君はこうした本を買えないよ」
「どうしてなの?」
「だってどっちの本もね」
店員は子供に穏やかに話す。
「君が買える年齢の本じゃないから」
「だから僕は買えないんだ」
「そうだよ」
こう子供に言うのだった。
「だから大人になってからまた来てね」
「うん、じゃあ」
こうしてだった、子供はその本を買えずに。
二人のところに戻ってだ、頭を下げてから言った。
「御免なさい、買えなかったよ」
「ああ、それじゃあな」
「仕方ない」
「君が悪いんじゃないからな」
「俺達が無理に頼んだものだ」
「だから気にするな」
「君は悪くない」
こう言ってだ、暁も未到も。
それぞれの鞄に手を入れてだった、暁は飴玉を未到はキャラメルを出してだった。子供に差し出して言った。
「これはお礼だ」
「俺達の頼みを聞いてくれたな」
「けれど買えなかったよ」
「買おうとしたからな」
「それで充分だ」
二人は微笑んで彼に言った、そしてだった。
子供はその飴玉とキャラメルを貰ってから店を出た、その彼を見送ってからだった。
暁はやれやれといった顔でだ、未到に言った。
「いいと思ったのにな」
「俺もだ」
未到もそうした顔で暁に応えた。
「流石に店員さんがああ言うなんてな」
「それじゃあ仕方ないな」
「ここは一旦家に帰って着替えてだ」
「他の店に行って買うか」
「そうするか、自分で買うべきか」
「自分で読むものだしな」
そうした本をというのだ。
「それじゃあ一旦家に買えるか」
「そうするとしよう」
二人はこう話してだ、そしてだった。
それぞれ一旦大人しく家に帰って着替えてだった。待ち合わせをして学校から離れた本屋に行った。そこで目当ての本を買ってだった。
こっそりと店を出てからだ、暁は未到に言った。
「じゃあまた家に帰ってな」
「読むとしよう」
こう話してだった、二人は再び家に帰るのだった。結局自分達でいささか手間をかけてそのうえで買うことになった。
子供でも 完
2015・8・22
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