第一部
第六章 〜交州牧篇〜
八十四 〜復活、青竜刀〜
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に気付いている事も織り込み済みなのですよ」
「ならば、睡蓮の今一つの意図、何と見る?」
「そうですねー。例えば、太史慈さんと二人がかりでお兄さんを襲うとか」
「風。冗談にならない事を口にするのは感心しませんよ?」
「むー。なら稟ちゃんは、孫堅さん達にお兄さんが食べられちゃってもいいと言うのですかー?」
「そうではありません。ただ、何らかの動きがある事だけは確かです。目を離さぬ方が良いでしょう」
何時にも増して、稟の口調は冷静そのものだ。
「今日の稟ちゃんはつまらないのです」
「つまらなくて結構ですよ、風。今の私には、何も恐れる物がないのですから」
……理由はわからぬが、とにかく自信に溢れている事だけは確かだな。
頼もしいに越した事はないのだが、さて。
「ご覧下さい、ご主人様」
「確かに癒えたと見て良いな、傷跡もわからぬ程だ」
臥所で、愛紗が腕を見てくれとせがんできた。
快癒している事を、どうしても私に確かめさせたいらしい。
「多少筋肉は落ちてしまいましたが、それは鍛え直せばどうとでもなります」
「あの動きでか?」
「ええ。鈴々の矛を受けるのに、やや手の痺れがありました。以前にはなかった事です」
「……ふむ」
「ですが、戦場で後れを取るような事はありませぬ。ご安心を」
「そうか。心強い事だ」
「……ご主人様。ん……」
鼻孔を、愛紗の香りがくすぐる。
軽く口づけすると、愛紗の眼が潤み始めた。
「武人として剣を手にできない事が何より無念でした。……ですが、今は一人の女として」
「何も言うな」
「……はい」
愛紗は微笑むと、身体を預けてきた。
この軽い身体の何処に、あれだけの力が秘められているのであろう。
無論、それは星も彩も疾風にも言える事だが。
「……ご主人様」
不意に、愛紗が腕に力を込める。
「何だ?」
「他の女の事など、今はお考え下さいますな」
「……何故、そう思う?」
「女の勘ですよ。それ以上でもそれ以下でもありませぬ」
ふっ、何とも恐ろしい事だな。
「わかった。……来い」
「はいっ!」
愛紗の温もりが、柔らかく私を包み始めた。
今はただ、それに身を委ねるとしよう。
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