第一部
第六章 〜交州牧篇〜
八十四 〜復活、青竜刀〜
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十分な食糧を確保でき、その生産の礎となる土地を得る事、これなくして覇権など得られる筈もなかった。
土地があれば兵を養え、民も逃散する事なく留まる。
結果、より大きな力を手にするようになり、その名を轟かせる事となる。
……一面でしかないであろうが、人とはそうしたものと考えている。
そう考えると、私もまた名を上げる結果となってしまっているのだが。
「既に朝廷の権威は失墜しています。庶人が頼るのはありもしない権威を振るおうとする者ではありません。力があり、そして食を得られる土地を守り通せる人物です」
「桜花、私がそうだと?」
「ええ」
「だが、それならば劉表や睡蓮(孫堅)らもそうだと言えるぞ」
「ふふ、でははっきり申し上げましょうか。孫堅様は確かに武に優れ、英雄の気質は備えています。……ですが、揚州牧となって日も浅く、その実効範囲は呉郡を中心とした東部の一部に過ぎません」
「残念ながら、それ以外の郡は未だ、孫堅さんに従わない太守や豪族も少なくないとか。それだけ、揚州は治めにくい土地柄ですから」
と、愛里。
「それから荊州ですが、劉表様は荊州そのものはしっかりと掌握していました。少なくとも、最近までは」
「……今は違うと申すか?」
「そう見ています。現に、紫苑は劉表を見限り、歳さまの許にいるではありませんか。遠からず、荊州は内部崩壊を起こすと見ています」
「ふむ」
「益州は言うまでもありませんね。劉焉様が亡くなり、今は混乱の最中。不安に駆られた庶人が、逃散するのは必然でしょう」
「もうおわかりでしょうが、流民は周囲のあらゆる州から入ってきているんです。……調査が追いつかない程の勢いで、ですが」
二人程の者が、深刻な顔をするのもやむを得ぬ事態という事か。
だが、流民が入ってくる事を阻止するのは難しかろう。
力尽くで押し止めれば、それは悪評を招くのみ。
……それこそ、宦官共に私を糾弾する口実を与えかねない。
「それにしても桜花」
「はい」
「なかなか、他者への評価は辛辣なのだな。私に手厳しかったのも当然という訳か」
「歳さま、私はそういう性分です。……それに、過ぎた事を蒸し返さないで下さい」
あまり表情を変える事のない桜花だが、珍しく拗ねたような顔をした。
それを見た愛里、思わず噴き出す。
「ぷっ! 桜花さんも、そんな顔をするんですね」
「愛里。わ、私だって木石じゃないのですよ!」
「す、すみません。でも、私や彩さんが本気で怒った事も忘れないで下さいね?」
「……そうでしたね。でも、私はその人となりを見定めるまでは、そうそう心を許すつもりはないですけどね」
「二人とも、その辺にしておけ。話が横道に逸れている」
「……コホン。失礼しました」
「すみません、私まで。ところで歳三さん
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