3部分:第三章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第三章
「それがありますから。そこには」
「わかりました。それでは」
「それを見させてもらいます」
「それじゃあですね」
ガイドさんは二人に笑顔で話す。顔は前を向いたままであるがそれでもだ。
「今から。行きます」
「はい、そこに」
「行きましょう」
二人も笑顔で頷く。そうしてであった。
三人が辿り着いた場所。そこは。
荒野の中にある岩山のだ。洞窟であった。その前に来たのだ。
その前に来てだ。まずは夫の方が言った。
「ここ、ですか」
「ここに何が?」
妻も言った。そこに何があるのかだ。
「ええと、動物でもいるんですか?」
「この洞窟の中に」
「動物ではなく人間がいます」
ガイドさんはこう夫婦に話した。
「この洞窟の中にです」
「?人間がですか」
「洞窟に住んでいるんですか」
「あっ、こう思われましたね」
ガイドさんは二人の言葉を受けてだ。微笑んでこう話した。
「そんな。原始人みたいな話がまだあるのかって」
「はい、それは」
「幾ら何でも」
実際にその通りだった。二人はそう思った。しかしだった。
ガイドさんはだ。微笑んだままだ。二人にこう話すのだった。
「これは文化なのです」
「文化?」
「文化なのですか、それは」
「そうです、文化です」
ガイドさんの言葉は変わらない。それはだった。
「こうした洞窟で生活するのも文化なのです」
「そういうものでしょうか」
「それは」
「私達が家に住むのと同じです」
それとだというのである。
「ですから」
「だからですか」
「それでなのですか」
「はい。では中に入ってみましょう」
夫婦に対して勧める。中に入ろうとだ。
「宜しいでしょうか」
「そうして中に住んでいる人に会ってですね」
「お話をですか」
「はい、それで宜しいでしょうか」
また尋ねてきたガイドさんだった。そうしてだ。
日本人の夫婦は実際に洞窟の中に入った。
洞窟の中は暗い。奥の方から薄い灯りが見える。その灯りから中に人がいることがわかる。その洞窟の中に三人で入ってからだ。
ガイドさんはだ。英語ではない言葉でだ。洞窟の奥に声をかけた。するとだ。
すぐにだその奥から返事が返ってきたのだった。
やはり同じ言葉だ。その言葉で、だった。
ガイドさんにだ。話すのだった。
やがて銀色の髪に黒い肌の痩せた人達がやって来た。彼等はだ。
「あっ、まさか」
「この人達は」
「あの。話に聞いています」
「オーストラリアに昔から住んでいる人達ですね」
「はい、アボリジニアンの人達です」
ガイドさんは日本語で二人に話した。
「この人達がです」
「アボリジニアン」
「この人達がですか」
「この人達は洞窟に住んでいる人達
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ