第七章
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「無理です」
「私もだった、若い時はな」
「そうだったのですね、お祖父様も」
「三人の妻達の仲の悪さに悩まされてだ」
つまりアマム達の祖母達である、他ならぬ。
「それで長い間三人でやっていてだ」
「そして四人目の方は」
「落ち着いてからだ、落ち着いた相手をだ」
「迎えたくて」
「それでだ」
そうした理由で、というのだ。
「迎えたのだ」
「あの方を」
「同じ歳の相手をな」
「若い娘にされなかった理由は」
世間でよくあるだ、資産を持つ者が若い奇麗な妻を後妻に迎える話だ。イスラムの場合は妻を複数持てるので何番目かの妻になる。
「若い娘を迎えれば」
「また喧嘩になるな」
「既に入っている奥方と衝突して」
「しかし年配で穏やかな女ならだ」
「それはない」
「だからだ」
それで、というのだ。
「私は四番目の妻はだ」
「そうした方を迎えられたのですね」
「三十以上も離れた相手との結婚はよくない」
そこまで年齢が離れれば、だ。
「それは火種の元になりかねない」
「その相手にもよりますが」
「年老いたなら年老いた相手をだ」
「妻に迎えるべきですね」
「しかも穏やかな相手をな」
「それも結婚するこつですね」
「若い頃は相手に美貌を求めてもいい」
結婚する相手にだ、カシムはその目に叡智を湛えて話していた。
「それでもな、しかしだ」
「それでもですね」
「歳を取ってからはだ」
そうなってからはというのだ。
「若い娘は迎えるな」
「同じ歳のですか」
「よく出来た相手を選ぶことだ」
「それがいいのですね」
「そのこともわかったな」
「身を以て」
アマムは祖父に真剣そのものの顔で答えた。
「大変だったので」
「そういうことだ、妻達を公平に愛することは難しくだ」
「疲れることですね」
「だからムハンマドも四人までとされたのだろう」
「あの方は十一人の奥方がおられましたが」
「あの方でないと十一人は無理だ」
到底、というのだ、カシムも真剣な顔だ。
「四人が限度だ」
「それ以上は確かに」
「公平に愛してその仲をまとめないと駄目だからな」
「そうですね、では四人目はお祖父様の年齢の頃に近付いてから考えます」
「くれぐれも若い女房は迎えるな」
「絶対にしないです」
三人の妻達の喧騒のことを思い出しつつだ、アマムは答えた。結婚してそうしてだった。彼はそうしたこともわかったのだった。
結婚しろと 完
2015・8・22
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