暁 〜小説投稿サイト〜
結婚しろと
第六章

[8]前話 [2]次話
「話をして宴もしてだ」
「お互いの仲を、ですか」
「改善する様にしていくのだ。お互いがわかばな」
 そのことによってというのだ。カシムは孫に彼が自分の人生の経験の中で得たことをそのまま孫に対して話した。
「喧嘩もしなくなる」
「今の様にですか」
「顔を見合わせれば罵り合い取っ組み合いになる」
「そこまでのことはですか」
「なくなるし子供達にもだ」
「吹き込まなくなりますか」
「結婚とはそういうもにだ」
 カシムはこうも言った。
「妻達のことを上手にまとめることもな」
「そのうちの一つなのですね」
「妻達を公平に愛してだ」
 コーランの言葉をとかく出すカシムだった。
「そしてだ」
「そのうえで、ですね」
「家庭をまとめることだ」
「相当に大変なことですね」
「その大変なことをすることがだ」
「結婚ですか」
「そういうことだ、ではいいな」
「はい、では」
 アマムは祖父のアドバイスに頷いた、そしてだった。
 彼は時間があると妻達を集めお互いに話をさせたり宴を開いたり出来る限りの娯楽を一緒にさせたりした。サウジアラビアの厳しい戒律の中でも。
 三人の仲は最初はすこぶる悪いままだった、だが。
 それがだ、次第にだった。
 仲がよくなってきてだ、それでだった。
 何とか普通の付き合いになった、家の中の派閥も解消された。
 その状況になってだ、アマムはカシムに現状を報告した。
「何とかです」
「家の中がだな」
「まとまってきました」
「平和になったな」
「そうなってきました」
 こう言うのだった。
「時間もかかりましたし労力もかなりでしたが」
「そうだろう、確かにあの時から時間が経っている」
「そうですね、苦労しました」
「その苦労がだ」
「それが、ですか」
「結婚というものだ」 
 まさにとだ、カシムは言い切った。
「苦労をして人間としてだ」
「学んでいくものが」
「だから御前に言ったのだ」
「結婚しろと」
「勿論他の孫達にも言っている」
 アマム以外の者にもというのだ。
「男でも女でもな」
「家と家の結婚でもあり」
「長年の対立も打ち消してな」
「そのうえで」
「御前個人もだ」
 それもというのだ。
「学ぶことが出来るのだ」
「そうしたものなのですね」
「だから結婚させたのだ」
「そうだったのですね、そして私は」
「どうした?」
「今妻三人いますが」
 しかしというのだった、ここで。
「四人目の妻は」
「わかるな」
「三人で、です」
「疲れたな」
「四人はもう」
 本音をだ、彼は嘆息しつつ祖父に述べた。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ