第二章
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「それでもな」
「はい、ビジネスにおいて」
「あらゆる分野でライバル関係にある」
「それこそ我が家が行っている分野の全てで」
「そうだ、しかしだ」
「その対立をですか」
「解消する為にもだ」
婚姻により結びつきを作ってというのだ。
「御前はだ」
「ラッサーム家の令嬢とですか」
「結婚するのだ」
「政略結婚ですね」
「結婚は何だ」
「家と家のものでもあります」
アラブでの常識をだ、アマムも述べた。
「まさに」
「西欧の今の考えは知らないがだ」
「結婚はそうしたものですね」
「家と家のものだ」
「だからですね」
「それをするのだ」
こう言うのだった。
「わかったな」
「両家の長年のいがみ合いを解消する為に」
「御前に結婚してもらう、いいな」
「はい」
結婚を承諾した時に覚悟を決め手いた、それでだった。
アマムは相手のことについても頷くしかなかった、そして実際にだった。
彼はその長年の宿敵だったラッサーム家の令嬢と結婚することになった。ただこの時に祖父にこう言われた。
「相手の顔の写真は見せない」
「絵もですね」
「結婚したその時に見ることだ」
「それまではヴェールの中ですか」
「そういうことだ」
イスラム、それもその戒律を厳密に守っているサウジアラビアだからだ。女性は今でもその顔をヴェールで隠しているのだ。
「写真や絵はだ」
「偶像ですね」
「それも駄目だ」
イスラムが偶像崇拝をことさら否定しているからだ。
「決してな」
「だからですね」
「そのこともわかっているな」
「私もイスラムです」
浅黒い肌に彫のある顔、やや切れ長のしっかりとした目に引き締まった顔立ち。睫毛は長く背は一七四位で引き締まった身体をしていて黒髪でありアマムは外見はアラブ人のものであるが信仰もそれであるのだ。
「ですから」
「そうだな、ではだ」
「わかりました」
「それでいい」
カシムはアマムが成長し髭を生やした顔で鷹揚に返した。アマムはスーツだがカシムはトウブを着ていて頭にはクーフィーヤを被っているがよく似合っている。
「ではだ」
「その女性を妻に迎えます」
「そしてだ」
「そしてとは」
「御前のことはわかっているつもりだ」
カシムはここでやや話題を変えてきた、その話題はというと。
「遊びも楽しんでいるな」
「はい」
その通りだとだ、アマムも答えた。
「私なりに」
「コーランに反しない限りで、だな」
「酒は口にしていません」
イスラムの教えを守って、というのだ。
「このことは誓って言います」
「ではわかるな」
「妻は、ですね」
「四人までいい」
鷹揚に座ったままだ。、アマムは孫に告げた。
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