4.姉ちゃんはヒーロー
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初夏。全国の吹奏楽部員たちが、夏のコンクールに向けて息巻いている季節だが、そんな時にうちの顧問が中々ファンキーなことを言い出しやがった。
「明日、この街の草野球チーム“大滝川テレタビーズ”の試合があるんだが、その応援にうちの吹奏楽部も出撃することになった」
「はい!」
「曲目はとりあえず野球部応援の時と同じでいいだろう。ヒット打った時のファンファーレっつーかジングル覚えてるよな?」
「はい!」
「んじゃ問題ないな。明日は8時に部室に集合。その後手配したバスに楽器搬入ってことで。以上、解散」
「はい!」
みんな『はいッ!』て返事をしてるけど、僕を含めてみんなの本音は絶対違う。
「先輩」
僕の隣の席に座る、同じくトロンボーンの後輩、秦野が話しかけてきた。年下の割にえらく落ち着いた感じの女の子だ。不思議とウマが合い、話をする機会もとても多い。長い黒髪でポニーテールの髪型といい、なんつーか比叡さんとは間逆なタイプの感じだ。
「ん?」
「今の話、どう思います?」
「秦野は?」
「多分、先輩と同じこと思ってます」
「やっぱり? 僕も秦野と考えてること同じだと思う」
「んじゃ試しに声に出してみますか」
「うん」
「「このクソ急がしい時期に余計な仕事を増やすなやゴルァ!!!」」
ああ……やっぱり秦野もそう思ってたんだね……吹奏楽部って意外と体育会系だもんね。仕方ないね。反射的に『はいッ!!』って本心とは真逆の返事しちゃうのは……
「この時期にってのはしんどいなぁ。ニヤニヤ」
出た。父さんお得意の、息子に降りかかった不幸をあざ笑うこのニヤケヅラ……。これは、ぼくが湧き上がるイライラを夕食時に家族+比叡さんにグチっていた時の、父さんの反応だ。父さん、あなたも元吹奏楽部でしょ。コンクールの近いこの時期に、こんなことやってる場合じゃないのは知ってるでしょう。今年は本気で金賞狙ってるんだから。
「シュウくんは音楽やってたんだね〜……」
比叡さんはなにやら感心したかのようなびっくりしたかのような顔をして、食卓に玉子焼きを並べてくれた。初めてお弁当を作ってくれたあの日以来、比叡さんは時々夕食時に玉子焼きを作ってくれる。何でも知り合いの人に教わった自信作なんだとか。誰って言ってたっけ……ズイホウさんだったかな?
あと、最近の比叡さんは少しずつ私服が増えてきていた。時々母さんと服を買いに出かけているらしい。比叡さんはよくTシャツとデニムのパンツを好んで着ていた。動きやすい服装が好みなようだ。カチューシャは外さないけれど。
「言ってなかったっけ? トロンボーンやってる」
「私はよくわからないけど、あのスライドをシャカシャカ動かして音程変えるやつ?」
比叡さんはそういってノ
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