暁 〜小説投稿サイト〜
姉ちゃんは艦娘
4.姉ちゃんはヒーロー
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す比叡さん。相手は手練のピッチャーみたいだし、きっと三振で終わるんだろうな…そう思いながら試合の行く末を見守った。

 ピッチャーが投げた初級。それはかなりのスピードを誇る速球だったわけだが……

「ほりゃぁあああ!!!」

 比叡さんがバットを振った瞬間、球場には金属バットでボールを打っただけとは思えないような、『カキン』ではない『ゴワキョォオオッ!!!』という音が鳴り響き、次の瞬間、『ドバゴォオオオン!!!』という野球の試合では聞こえるはずのない爆発音と共に、ボールはバックボードに突き刺さっていた。

 球場全体を静寂が襲った。比叡さん以外の、球場にいた全員が息を呑んだ。女性である比叡さんが、手練のピッチャーが投げた速球を打ち返したのだ。しかもあろうことかホームランである。バックボードに巨大な風穴を開けるほどの特大ホームランである。その場にいた誰もが、比叡さんに度肝を抜かれた。

 もちろん、僕も度肝を抜かれた。ファンファーレを吹くことも、その瞬間は忘れた。それほどまでに、比叡さんの一撃は強烈なインパクトだった。

「シュウくーん!!」

 呆然とした僕を勝機に戻したのは、同じく比叡さんの声だった。

「シュウくーん!!」
「……ハッ?!!」
「シュウくん!! 見ててくれた?!!」
「うん。見てた……」
「よかったー! 頑張った甲斐があったよー!!」

 比叡さんはそう言って、いつものお日様のような笑顔を僕に向けた。

「……ハッ?! ほ、ほら! バッター早くホーム回って!!」
「ひぇえええ! す、すみません!!!」

 主審の人にそう怒られ、大慌てで塁を回る比叡さんが、僕には輝いて見えた。

 その後も比叡さんの活躍は続いた。守備に回ればナイスセーブを連発し、バットを握ればホームランを量産……一度だけ、先発から交代した相手ピッチャーがミスをして、比叡さんの顔面に向かってボールを投げてしまうという危険な瞬間があったが……

『ひぇぇええええ!!!!』

 比叡さんは、それすら強引にバットに当て、ホームランにしてしまった。まさに無敵。怖いものなし。結果、試合は大滝川テレタビーズの快勝。今日、テレタビーズに一人のヒーローが誕生したのだった。

「ん? ヒロインじゃないの?」
「いやなんとなく、ヒロインよりはヒーローの方がしっくりくるな〜と思って」

 そういえば母さんがそんなことを言っていたのを今更ながら思い出したのだが……大滝川テレタビーズと北ヶ岳チョモランマーズは、試合の後はノーサイドでバーベキュー大会をするのが習わしとなっているらしく、その日も試合後には僕達吹奏楽部員も交えての大バーベキュー大会となっていた。その途中、比叡さんに『よっ。テレタビーズのヒーロー』と声をかけた時の事
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